気分(読み)きぶん

精選版 日本国語大辞典 「気分」の意味・読み・例文・類語

き‐ぶん【気分】

〘名〙
① 心持。気持。ここち。ある期間持続する、比較的弱い感情の状態をいい、不快、憂鬱(ゆううつ)快活など。現在では、先天的で持続性の強い感情の状態をいう「気質」とは区別される。
※源平盛衰記(14C前)四二「地体脚気の者なる上に、此の間馬にふられて、気分(キブン)をさし、手あばらに覚へ侍り」
※青年(1910‐11)〈森鴎外〉二二「湯を浴びて来て、少し気分(キブン)が直ったので」
② 気質。性質。気性
※名語記(1275)五「未開の女の気分にちかづく」
③ 様子。感じ。趣。雰囲気。
今昔(1120頃か)三「此の后、本の気分(きぶん)有て、さ許(ばかり)おかし気に、目出く清気なるに」
※日本の裏街道を行く(1957)〈大宅壮一〉長州の神々「教祖の歌は、声もよく、ゼスチュアたっぷりで、気分を出すことは堂に入ったものだから」
④ 気分がすぐれぬこと。病気。
吾妻鏡‐寛喜元年(1229)正月二七日「自去十九日気分。今朝殊悩乱難産也」
⑤ 仏語。習慣的な行為によって性格づけられ、心中に蔵される精神的エネルギー。これがまた、特定の行為を生み出す力になる。
※法相二巻抄(1242か)上「種子と申は、色心諸法の気分なり」

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デジタル大辞泉 「気分」の意味・読み・例文・類語

き‐ぶん【気分】

快・不快など、ある期間持続する、やや漠然ばくぜんとした心身の状態。
㋐ある状況によってもたらされる、その時の心持ち。「仕事をする気分になれない」「今日は気分がのらない」「気分を新たにする」
㋑からだの状態によって生じる気持ち。「船酔い気分が悪くなる」「気分がすぐれない」
その場の雰囲気ふんいき。趣。「音楽会場気分を盛り上げる」「正月気分が抜けない」「お祭り気分
気質。気性。「さっぱりした気分の人」
気持ち[用法]
[類語](1気持ち心地心持ち気色きしょく機嫌感情心境じょう情感心情情緒じょうしょ・じょうちょ情調情操情念情動喜怒哀楽感じエモーション/(2雰囲気感じ情緒情調ムード空気風情気韻風韻幽玄興味内容興趣情趣風趣風格余情余韻詩情詩的味わい滋味醍醐味妙味雅味物の哀れポエジー

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改訂新版 世界大百科事典 「気分」の意味・わかりやすい解説

気分 (きぶん)

英語のmood,ドイツ語のStimmung,フランス語のhumeurに相当する言葉。一般に心身についての微弱で持続的な感情をいう。類義語として情趣,情調などがある。ヤスパースによれば〈長く続く感情状態のときの気持,内的状態で,それが長く続くとき精神生活全体に特別の色彩を添えるもの〉とされ,K.シュナイダーによれば〈経過の長い,必ずしも常に反応性ではない感情状態〉である。また個人に特有な恒常的感情は基本気分といわれる。実存哲学においては気分が重要な概念であることが特徴であり,例えばハイデッガーにおいては〈理解Verstehen〉とともに現存在の開示性を構成する本質的契機とされる。
感情
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「気分」の意味・わかりやすい解説

気分
きぶん
mood

全般的な身体組織の機能に依存する比較的軽度の感情状態。健康状態と密接に関連するが,快ないし不快なさまざまな心理的原因によっても大きく影響される。気分は体験全般に対して感情的色彩を付与する傾向をもち,種々の情動の生起およびその強度は気分のいかんによって大きく左右される。

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世界大百科事典(旧版)内の気分の言及

【感情】より

…〈気持〉〈心持〉のような,人間の心理状態の受動的で主観的な側面をいう。感情には,〈明るい気分〉〈けだるい気分〉〈気分が良い・悪い〉と言われる場合の気分のように,身体の生理的状態の意識への反映と思われる微弱だが持続的なものから,漠然とした快・不快感,激しい欲情や嫌悪感,〈躍り上がって喜ぶ〉とか〈涙を流して悲しむ〉といった身体的表出をともなう激しい情動,ある種の欲望に似た強く持続的な情熱,さらに宗教的感情のようなある種の価値への畏敬の感情にいたるまで実に多様な心的状態が含まれる。いずれもわれわれにとってきわめて身近なものでありながら,この感情の学問的解明は遅れており,相互に対立し合うさまざまな説明が与えられている。…

※「気分」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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