日本大百科全書(ニッポニカ) 「江差(町)」の意味・わかりやすい解説
江差(町)
えさし
北海道南西部、渡島(おしま)半島、檜山(ひやま)振興局管内にある町。檜山振興局の所在地。町名はアイヌ語の「エサシ」(コンブまたは出崎の意)に由来。古くから開けた所で、箱館奉行(はこだてぶぎょう)、函館(はこだて)県、弘前(ひろさき)県、青森県所属を経て、1872年(明治5)開拓使函館支庁の所属となった。1900年(明治33)町制施行。1955年(昭和30)泊(とまり)村を合併。JR江差線の終点であったが江差線は2014年(平成26)廃線となった。国道227号、228号、229号が通じ、江差港から奥尻(おくしり)島への航路がある。海岸段丘が発達し、市街地は段丘面上にあり、前面は鴎島(かもめじま)を有して江差港を外海から守り、同港は天然の良港をなす。かつてはヒノキ材生産とニシン漁で栄え、江差の5月は江戸にもないといわれ、人口3万を数えた。いまはそのおもかげはなく、イカ、サケ、マス、スケトウダラなどが漁獲されるが、沿岸漁業の衰退で漁場整備が行われている。当時の廻船問屋(かいせんどんや)旧中村家住宅(国の重要文化財)、横山家、姥神(うばがみ)大神宮、幕末の軍艦開陽丸の引き揚げ場などがある。また民謡『江差追分』の発祥地で、道無形民俗文化財に指定されており、全国大会が開かれる。ヒノキアスナロおよびアオトドマツの自生地は国の天然記念物。かもめ島は檜山道立自然公園の特別区。面積109.48平方キロメートル、人口7428(2020)。
[瀬川秀良]