江西(省)(読み)こうせい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「江西(省)」の意味・わかりやすい解説

江西(省)
こうせい / チヤンシー

中国、華中(かちゅう)地区南東部の省。長江(ちょうこう)(揚子江(ようすこう))中流部南岸にあり、唐代には江南西道に属し、元(げん)代江西行中書省、清(しん)代江西省となった。贛江(かんこう)が江西省最大の河川なので、贛と略称される。南昌(なんしょう)、景徳鎮(けいとくちん)、萍郷(へいきょう)、新余(しんよ)、九江(きゅうこう)、鷹潭(ようたん)などの11の地級市に分かれ、そのなかには貴渓(きけい)市をはじめ11の県級市と63県、26市轄区がある(2018年時点)。省都は南昌市。面積16万6900平方キロメートル、常住人口4647万6000(2018)。漢族以外に回族、ミャオ族(苗(びょう)族)、ショオ族ヤオ族などの民族が居住する。

 東、南、西の三方山地に囲まれ、北部の鄱陽湖(はようこ)(中国最大の淡水湖)に向かって傾斜し、山地と丘陵省内の60%以上を占める。鄱陽湖平原は鄱陽盆地ともいい、面積約2万平方キロメートル、大部分が標高50メートル以下の低地で、贛江、撫河(ぶが)、信江その他多くの河川が鄱陽湖に流入し、湖の周辺は縦横に水路の走る水郷地帯をなす。東部には武夷山(ぶいさん)、南部には南嶺(なんれい)、西には羅霄(らしょう)山脈があって、それぞれ福建(ふっけん)、広東(カントン)、湖南(こなん)各省との省境をなし、北西に幕阜(ばくふ)山がある。中部も大部分は赤色土の丘陵である。気候は温暖で年降水量は1300~2000ミリメートル、春の梅雨と夏の豪雨がその大部分を占める。

 大部分の地区では二毛作、一部では三毛作がみられ、米作を主とし、主穀作付面積の80%以上(収穫量の90%)を占める。商品作物は菜種、ワタ、黄麻(こうま)(ジュート)、苧麻(ちょま)を産し、南部ではサトウキビも栽培される。丘陵部では茶園が多く、武寧(ぶねい)の紅茶、婺源(ぶげん)の緑茶が有名である。山地にはツバキが多く、またタケ、マツ、スギが繁茂する。果樹は柑橘(かんきつ)類が主である。地下資源としては、南部の大余(だいよ)県を中心とするタングステンが世界的に有名だが、そのほか徳興の銅、萍郷の石炭をはじめ、鉄、鉛、亜鉛などの鉱床も存在する。エネルギー源としては拓林、万安の大型ダムがあり、工業は中華人民共和国成立前は非鉄金属の精錬のほか、製米、製茶、紡織などの軽工業が若干存在するだけであったが、中華人民共和国成立後工業化が進み、南昌をはじめ、九江、贛州(かんしゅう)などに機械、化学、紡織、製紙などの工業が発展している。また景徳鎮は磁器生産の全国的中心地として名高い。西端の羅霄山脈中にある井岡山(せいこうざん)は、第二次国内革命戦争期(1927~1937)に毛沢東(もうたくとう)が農村革命根拠地を最初に建設した地であり、省都南昌は朱徳(しゅとく)や周恩来(しゅうおんらい)などが1927年8月1日に紅軍を編成して決起した所である。南東部の瑞金(ずいきん)は、この両者が統一され、中国最初のソビエト政権が樹立され、4回にわたる蒋介石(しょうかいせき)軍の包囲攻撃を撃破した古戦場であるだけに、革命史跡が各地に残っている。しかし、それだけに2万5000里長征で中国赤軍が陝西(せんせい)省に大移動をしたあとは、国民党政権に徹底的に攻撃され、その結果経済的に後れた地域となり、回復に時間がかかった。省内には滬昆(ここん)線(上海(シャンハイ)―昆明(こんめい))が東西に走り、1996年省内を南北に縦貫する京九線も完成し、北京や香港(ホンコン)に直結するに至った。鷹厦(ようか)線(鷹潭―厦門(アモイ))、皖贛(かんかん)線(蕪湖(ぶこ)―鷹潭)などの鉄道を分岐している。

[河野通博]

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