日本大百科全書(ニッポニカ) 「沈佺期(しんせんき)」の意味・わかりやすい解説
沈佺期(しんせんき)
しんせんき
(656?―714)
中国、初唐の詩人。字(あざな)は雲卿(うんけい)。内黄(河南省)の出身。675年(上元2)の進士。唐代の初めは、六朝(りくちょう)の名残(なごり)を受けて、詩の中心は宮廷にあったため、沈佺期の作品も自然、応酬の作が多く、宮廷詩人的色彩を免れないが、のち、パトロン張易之(ちょうえきし)の失脚により驩州(かんしゅう)(北ベトナム)へ流罪となった際の作品には、個人の感情を盛り込んだ詩作が出現し、六朝詩学の蓄積を継承して、近体詩(七言律詩(しちごんりっし))の定型を完成させた詩人として、盛唐の詩人たちの詩風へと連なる橋がかり的存在となっている。『沈佺期集』がある。
[野口一雄]