河岸・川岸(読み)かし

精選版 日本国語大辞典 「河岸・川岸」の意味・読み・例文・類語

かし【河岸・川岸】

〘名〙
① 川の岸。また、特に舟から人や荷物の上げ下ろしをするところ。転じて、海や湖の岸にもいう。
※浮世草子・新吉原常々草(1689)上「かしは江戸中の浜の事也」
※物類称呼(1775)一「河岸 かし 江戸にて、かしといふ。本町河岸或は浜町がしなど云。大坂にて、はまといふ〈略〉京にて、川ばたといふ」
川岸に立つ市場。特に魚市場魚河岸。雑喉場(ざこば)。また、そこへ買い出しに行くこと、およびその人。
※黄表紙・辞闘戦新根(1778)「かしのさかなで、なんとあたらしからうがや」
※歌舞伎・夢物語盧生容画(1886)六幕「まだ川岸が戻らぬと」
③ 江戸新吉原を囲むお歯黒どぶに沿って東西の溝に面した通り。また、そこにある遊女屋。郭内でも下級の店が多かった。河岸店。
※浮世草子・新吉原常々草(1689)上「くにといふかしの女良が油火にむかひて文書るさま」
[語誌](1)①の意味で江戸で用いられはじめた語と思われるが、西日本の周辺部にも同形の方言が存在するので、遡って上代用例の見られる「かし(戕)」(水中に立てる杭の意)の転義として用いられるようになったものか。
(2)川岸の船着き場物流の要であるところから、②の意が生じるが、特に魚類商いが行なわれたので「うおがし(魚河岸)」とも呼ばれた。
(3)③の用法は、江戸ではさらに一般化して、「河岸狂い」「河岸女郎」などの語も生まれた。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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