改訂新版 世界大百科事典 「洗濯セッケン」の意味・わかりやすい解説
洗濯セッケン(石鹼) (せんたくせっけん)
household soap
laundry soap
一般家庭用で衣服等の洗濯に使用するセッケン。商品としての形状には,固状,粉状,フレーク状,ビーズ状等がある。洗濯セッケンとしては,あか,油,泥等の汚れに対する洗浄力が大きいこと,衣服の繊維を傷めないこと,日常品のため安価であることが必要条件であり,また,水に対する溶解性も適度であること,色むら・悪臭のないことが求められる。さらに,固状のものでは,適当な硬さをもち,成形性がよく,ひび割れ等のないものが望まれる。原料としてはヤシ油25~40%および牛脂硬化油などを60~75%配合して作られる。通常,中性のマルセルセッケンが最良であるが,洗浄力向上のためにケイ酸ナトリウムを主としたビルダーを加える。粉状のものでは,主として価格の点および溶解性をよくする目的で液体油脂,とくに米ぬか油などの不飽和度の高い油脂を中心に,牛脂,ヤシ油などを用い,タイター(混合脂肪酸の融点)が30℃くらいになるように配合する。炭酸ナトリウムを主とするビルダー30~50%を加える。
セッケンには,硬水によって水に不溶性の金属セッケン(セッケンかす)を生じて洗い上がりの触感を害したり,冷水では溶解性が低く,十分な洗浄効果を発揮できないなどの欠点がある。セッケンかすの生成を防止するためにカルシウムセッケン分散剤を配合したり,水への溶解性を向上させるために界面活性剤を添加した改質セッケンが用いられている。このような助剤としての界面活性剤含量が3%を超えたものは家庭用品品質表示法では複合セッケンとして区別されている。
現在,電気洗濯機の普及により,洗濯セッケンは大部分が合成洗剤に代替されているが,近年,洗濯廃水の公害問題から,洗濯セッケンが,あらためて再評価されている。
→セッケン
執筆者:内田 安三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報