津国の(読み)つのくにの

精選版 日本国語大辞典 「津国の」の意味・読み・例文・類語

つのくに‐の【津国の】

摂津の国の」の意で、その地の地名や物と同音・類音の語句にかかる。この場合、縁語・懸詞などの技巧が多いので、地名としての「津の国」の意もこめられている場合も多い。
① 地名「難波(なには)」と同音の語句にかかる。
(イ) 「名には」にかかる。
※後撰(951‐953頃)恋三・七六九「つのくにのなには立たまく惜しみこそすく藻たく火の下にこがるれ〈紀伊内親王〉」
(ロ) 「何は」にかかる。
古今(905‐914)恋四・六九六「つのくにのなには思はず山しろのとはに逢ひ見んことをのみこそ〈よみ人しらず〉」
② 地名「昆野(こや)」と同音の語句にかかる。
(イ) 「此や」にかかる。
※後拾遺(1086)雑二・九五九「これもさはあしかりけりな津の国のこや事づくる始めなるらん〈上総大輔〉」
(ロ) 「来(こ)や」にかかる。
※後拾遺(1086)恋二・六九一「津国のこやとも人を言ふべきにひまこそなけれ蘆の八重ぶき〈和泉式部〉」
(ハ) 「小屋」にかかる。
※続千載(1320)冬・六八〇「津国のこやの芦葺き埋もれて雪のひまだに見えぬ比哉〈覚助法親王〉」
③ 地名「長柄(ながら)」と同音を含む「ながらふ」にかかる。
※後拾遺(1086)雑二・九五八「しばしこそ思ひも出でめ津の国のながらへゆかば今忘れなん〈中宮内侍〉」
④ 地名「御津(みつ)」と同音の「見つ」にかかる。
古今六帖(976‐987頃)五「津のくにのみつとし見ては難波なるあしかりきとも人に語るな」
⑤ 地名「長洲(ながす)」と類音の「泣かず」にかかる。
※拾遺(1005‐07頃か)恋一・六七六「人知れず落つる涙はつのくにのなかずと見えて袖ぞくちぬる〈よみ人しらず〉」
⑥ 地名「三島」と同音の「見し間(ま)」にかかる。
※詞花(1151頃)雑上・二七二「春霞かすめるかたやつのくにのほのみしま江の渡りなるらん〈源頼家〉」
⑦ 津の国の景物である「葦(あし)」と同音を含む「葦毛(あしげ)」にかかる。
※関西大学蔵本拾玉集(1346)一「津の国のあしげの駒にのりの跡は我思ひいる道にぞ有ける」
⑧ 津の国の景物である「葦の丸屋(まろや)」、「丸屋」と同音の「麿や」にかかる。
金葉(1124‐27)恋下・四九一「津の国のまろ屋は人をあくた河君こそつらき瀬々は見せしか〈よみ人しらず〉」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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