浮船・浮舟(読み)うきふね

精選版 日本国語大辞典 「浮船・浮舟」の意味・読み・例文・類語

うき‐ふね【浮船・浮舟】

[1] 〘名〙
水上に浮かんでいる船。水面にただよっている小船。
※宇津保(970‐999頃)吹上上「荒るる海に泊りも知らぬうきふねに波の静けき浦もあらなん」
② 停泊中の大船と船着場とを連絡する小船。はしけ。はしぶね。
今昔(1120頃か)一九「若干(そこばく)眷属を浮船に乗せて追ひ遣る」
③ 沈んでいる船を浮き上がらせること。また、その船。
※阿蘭陀船破損書付(1798)「折節右沈船の様子を聞伝へ、〈略〉何とそ浮舟いたし度心付」
④ 馬を御する手綱の引き方の秘伝。〔運歩色葉(1548)〕
⑤ 近世中期に行なわれた女性の髪形の一つ。笄(こうがい)に髪を千鳥がけに巻きつけたもの。
※歌舞妓事始(1762)二「うきふね ふきわげのごとくにゆひ、かうがいをさし、それへかみを、ちどりがけにかける也」
⑥ 水上飛行機の下部に取り付けるもの。フロート
[2] (浮舟)
[一] 「源氏物語」第五一番目の帖の名。宇治十帖の第七。薫二七歳の正月から三月まで。浮舟は薫と匂宮との愛の板ばさみに苦しみ、入水の決意をする。
[二] 「源氏物語」宇治十帖の主要登場人物の後世読者による呼称。八の宮とその侍女中将の君との間の女子で、大君、中君の異母妹
[三] 謡曲。四番目物。各流。横越(よこお)元久作詞。世阿彌作曲。「源氏物語」による。諸国一見の僧が宇治で浮舟の霊に会い、小野へ行き、これを弔う。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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