測量船(三好達治の詩集)(読み)そくりょうせん

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

測量船(三好達治の詩集)
そくりょうせん

三好達治(みよしたつじ)の第一詩集。1930年(昭和5)第一書房刊。1926年から1930年にかけて発表した詩39編を収録。

 巻頭に置かれた「春の岬 旅のをはりの鴎(かもめ)どり/浮きつつ遠くなりにけるかも」という「春の岬」は『測量船』の代表作である。短歌形式を踏襲しながら、去りゆく季節を不動な地形「岬」に、季節から遠ざかる人を「鴎」に設定し直して、作品の世界がつくられている。そうすることで、惜春の情という伝統詩歌のモチーフを背後に忍ばせながら、青春時代と決別していく現代の若者の心情を鮮やかに描き出した。「あはれ花びらながれ/をみなごに花びらながれ」の一節で始まる詩「甃(いし)のうへ」にも、舞い落ちる花のなかで語らい歩む乙女らを眺める物憂げな青年像が造型されている。「郷愁」で「蝶(ちょう)のやうな私の郷愁!……。蝶はいくつか籬(まがき)を越え、午後の街角に海を見る……。」と表現した蝶のイメージは、安西冬衛(あんざいふゆえ)が短詩「春」(「てふてふが一匹韃靼(だったん)海峡を渡つて行つた。」)で描いたものを換骨奪胎したものである。その一方で菱山修三(ひしやましゅうぞう)が三好の作品を手本にしたように、同時代のモダニズム詩人が共同しつつ競い合う状況下で、『測量船』は成立した。

[藤本寿彦]

『思潮社編・刊『現代詩読本・新装版 三好達治』(1985・思潮社)』『『三好達治詩集』(岩波文庫)』

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