湖西市（読み）コサイシ

デジタル大辞泉

こさい‐し【湖西市】

⇒湖西

出典　小学館

日本歴史地名大系

湖西市
こさいし

面積：五五・〇八平方キロ

県の西端に位置し、北は引佐（いなさ）郡三（みつ）ヶ日（び）町、東は浜名湖を挟んで浜松市、南東は浜名郡新居（あらい）町、南は遠州灘、西は愛知県豊橋市に接する。北から西にかけて標高三〇〇メートル前後の弓張（ゆみはり）山脈（湖西連峰）が連なる。遠州灘に沿って東西に延びる天伯原（てんぱくはら）台地があり、西の台地から東に流れる太田（おおた）川と、南の台地から北に流れる笠子（かさご）川はともに浜名湖に注ぐ。県境には境（さかい）川が流れる。江戸時代には東海道の白須賀（しらすか）宿が設けられた。明治以降になると国道一号となる。平成八年（一九九六）にはその南側に潮見（しおみ）バイパスができた。市の東側を南北に国道三〇一号が通る。

〔原始・古代〕

市域の遺跡は一〇〇余ヵ所登録されているが、大半は西部から南部にかけての丘陵地帯に営まれた古窯跡である。旧石器は未確認で、縄文時代の遺跡ではイノコ遺跡と若磯神社境内（わかいそじんじやけいだい）遺跡が古くから知られている。前者では前期弥生土器も出土している。弥生時代では町（まち）ノ坪（つぼ）遺跡や五反田（ごたんだ）遺跡などが調査されている。古い古墳は未確認で、後期の群集墳は神座（かんざ）から梅田（うめだ）にかけての丘陵部に集中している。古窯跡は湖西古窯跡群と総称され約一千基と推定される。五世紀から九世紀に須恵器が生産され、一二―一三世紀に山茶碗が生産された。ここで焼かれた須恵器は県内はもちろん、関東各地に運ばれている。平安時代中期に営まれた大知波峠（おおちばとうげ）廃寺は山岳寺院跡として注目されている。古代は浜名郡に含まれ、「和名抄」にみえる駅家（うまや）郷・英多（あがた）郷に属したという説もある。条里の遺構は大知波地区のほか、笠子川流域や古見（こみ）川流域にみられる。

〔中世〕

市域南部から新居町にかけては摂関家領の吉美（きび）庄があった。室町期から戦国期にかけては吉美郷・新所（しんじよ）郷・鷲津（わしづ）郷・古見郷がみえ、現在の同名地を遺称地とする。戦国期には今川氏の直接支配が広がり、入出（いりで）には宇津山（うづやま）城、吉美に境目（さかいめ）城が造られ、国境の城としての役割を担っていた。鷲津には法華宗陣門派本興（ほんこう）寺、吉美には日蓮宗妙立（みようりゆう）寺が南北朝時代に建立され、今川氏からも寺領を安堵された。当時は大伽藍があり、現在まで寺宝が残されているのは、交通の要地にあったからであろう。室町幕府六代将軍足利義教は永享四年（一四三二）に富士遊覧に行く途中潮見（しおみ）坂で歌を作り、天文年間（一五三二―五五）に関東へ旅した法華門徒たちは往復とも白須賀を通っており（「参詣道中日記」大村家文書）、東海道は室町時代も近世と同じく白須賀を通るコースであった。

湖西市
こさいし

２０１０年３月２３日：湖西市が浜名郡新居町を編入
⇒【湖西市】静岡県
⇒【新居町】静岡県：浜名郡

出典　平凡社「日本歴史地名大系」

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

湖西〔市〕
こさい

静岡県南西端，浜名湖の西岸にある市。西は愛知県と接する。1955年白須賀町，鷲津町の 2町と新所村，入出村，知波田村の 3村が合体して湖西町となり，1972年市制。2010年新居町を編入。遠州灘に臨む白須賀，新居は，かつては東海道の宿場町として発展。新居には慶長5（1600）年に徳川家康が創設した関所である新居関（国指定特別史跡）が残る。湖岸にある中心市街地の鷲津は豊田佐吉の出生地で，明治以後綿織物工業が興り，その後も繊維を中心に発達。第2次世界大戦後，産業の中心は自動車部品や電機部品関係の精密工業へと移行。農村部では花卉の集団栽培，ミカンの栽培が行なわれ，沿岸部ではウナギ，ノリの養殖，シラス，ボラなどの漁業が行なわれる。浜名湖，本興寺（国指定重要文化財），潮見坂など観光資源にも恵まれ，市域の一部は浜名湖県立自然公園に属する。東端にある新弁天島（→弁天島）はアサリの潮干狩り，海水浴で知られる。海岸部を国道1号線が，湖岸を 301号線，JR東海道本線，天竜浜名湖鉄道が通る。面積 86.56km²。人口 5万7885（2020）。

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