溶食(読み)ヨウショク

デジタル大辞泉 「溶食」の意味・読み・例文・類語

よう‐しょく【溶食/溶×蝕】

雨水地下水によって岩石表面溶解し、浸食される現象石灰岩地域ではカルスト地形ができる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「溶食」の意味・わかりやすい解説

溶食
ようしょく

岩石、鉱物、土壌などに対する水の溶解作用や、溶解した物質を流水が他の場所に流し去る作用など、水の化学的侵食作用の総称。溶食作用ともいう。ただし、ラテン語由来の原語のコロージョンcorrosionは腐食を意味し、かならずしも水の作用をさすとは限らず、岩石や鉱物の化学的な風化や侵食をいう。すなわち、溶解、炭酸塩化、加水分解、酸化、水和などの化学的プロセスによる、岩石や鉱物の変化や減耗を意味する。水の溶解作用は、火山地域や鉱山の廃水のように、酸やアルカリの強い水の場合のほかはあまり著しくない。ただ、石灰岩は炭酸ガスを含む水に溶けやすく、石灰岩地域では雨水や地下水の侵食作用が激しくて、カッレンKarren(ドイツ語)、ドリーネDoline(ドイツ語)、石灰洞などのカルスト地形発達させる。そのため、石灰岩地域の侵食作用をさして溶食ということもある。岩塩石膏(せっこう)やドロマイトなどの堆積層からなる地域にも、サルトカルストsalt karstとよばれるカルスト地形類似の溶食地形が生ずる。永久凍土の発達地域にも、カルスト地形類似のサーモカルストthermokarstとよばれる地形の発達をみるが、これは地中氷自身の融解により生ずるものであるから、厳密には溶食地形とはされない。火山灰や噴石中にみる沸石長石のような不安定鉱物は、雨水の溶食を受けやすく、凝灰岩集塊岩の堆積地域に火山カルストを生じる。

[壽圓晋吾]

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百科事典マイペディア 「溶食」の意味・わかりやすい解説

溶食【ようしょく】

カルスト浸食とも。石灰岩の主成分である炭酸カルシウムCaCO3が炭酸ガスを含む雨水によって徐々に分解,溶解されること。溶食によって作られる地形を溶食地形またはカルスト地形と呼ぶ。
→関連項目浸食作用溶食湖

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世界大百科事典(旧版)内の溶食の言及

【河食作用】より

…これに比べると硬い岩盤の所では目に見えるような変化は起こりにくいが,岩石中の節理や割れ目に沿って岩塊がもぎ取られることがあり,これを切離作用という。化学的浸食作用とは流水とこれに接する地面を構成する物質との間に行われる化学反応の結果生じたすべての化学的変化のプロセスを指していい,流水が異物質を溶解して除去するので溶食corrosionという。川の水の中には多量の溶存成分が含まれているが,これはおもに地下水が地中をゆっくりと移動する間に取り込んできたもので,川の水による溶食は地下水に比べて接触時間がはるかに短いので微々たるものである。…

【浸食作用】より

風化作用によってあらかじめ地表が風化生成物の岩屑や土壌に覆われている状態は,浸食の進みにとってつごうがよいが,風化作用は浸食の前提として必須というわけではない。 浸食erosionはラテン語のerodo(嚙(かじ)り取る)に由来する語で,その作用(営力)の種類によって雨食,河食,雪食,氷食,溶食,風食などが区別される。浸食営力の種類によって生ずる地形の特色が異なるので,浸食は地形を理解するためにも重要な意味をもっている。…

※「溶食」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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