澁澤龍彦(読み)しぶさわたつひこ

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「澁澤龍彦」の意味・わかりやすい解説

澁澤龍彦
しぶさわたつひこ

[生]1928.5.8. 東京
[没]1987.8.5. 東京
フランス文学者,小説家,エッセイスト。本名龍雄。1953年東京大学仏文科を卒業。1954年にジャン・コクトーの『大股びらき』の翻訳を上梓して注目される。1956年の『マルキ・ド・サド選集』,1959年の評論集『サド復活』をはじめ,一連のサドの翻訳,エッセーによって 18世紀フランスの異能作家を紹介した功績は高く評価されている。1961年にサドの訳書悪徳栄え』続編が猥褻文書とされ(→猥褻罪),以後いわゆる「サド裁判」で芸術か猥褻かを最高裁判所まで争ったが,1969年に有罪が確定した。ヨーロッパ中世の悪魔学,エロティシズム異端文学・芸術の研究もよくし,『胡桃の中の世界』(1974),『思考の紋章学』(1977)では古今東西文献から得た豊潤な知識と洒脱な文章でエッセーの新境地を開いた。さらに『唐草物語』(1981,泉鏡花賞),『高丘親王航海記』(1987,読売文学賞)など,特異な小説世界も生み出した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「澁澤龍彦」の意味・わかりやすい解説

澁澤龍彦
しぶさわたつひこ
(1928―1987)

小説家、評論家、フランス文学者。本名澁澤龍雄(たつお)。1953年(昭和28)東京大学仏文科を卒業。1959年サドの『悪徳の栄え』を翻訳出版し、1961年猥褻(わいせつ)文書販売・所持罪となる。サドおよびフランス現代文学の翻訳、中世ヨーロッパの悪徳文学と東西文化のエロス的異端の系譜などを追求し、評論、小説などに活躍した。1962年小説『犬狼都市』『神聖受胎』、1964年『夢の宇宙誌』、1965年『新サド選集』『快楽主義―現代人の生き甲斐(がい)を探求する』、1967年に『エロティシズム』、1971年『黄金時代』、1972年『悪魔のいる文学史―神秘家と狂詩人』など、形而上(けいじじょう)学的なイメージを描いた。ほかに著書は『澁澤龍彦集成』、泉鏡花賞の『唐草物語』、『マルジナリア』、読売文学賞の『高丘親王航海記』など。昭和62年8月5日没。

[編集部]

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