出生時に出生届が出されなかったため、戸籍への記載や戸籍自体がない状態。日本では戸籍法により子の出生時に出生届を出して戸籍をつくることが義務づけられている。しかし、母親が配偶者などからの暴力(ドメスティックバイオレンス)から逃れている状態にあり、届けを出すことで居所を知られるおそれがある場合や、離婚成立前に他の男性との間になした子が、民法772条の嫡出推定規定(離婚後300日以内に生まれた子は前夫の子と推定する)によって前夫の子とされることを拒むため、そして経済的理由などによって、母親が出生届を故意に出さないケースが生じていた。なお、無戸籍と無国籍は異なり、無戸籍でも出生時に日本国籍取得の条件を満たしていれば、日本国籍を有する。
無戸籍の人は、年齢の証明ができず、選挙権がない。住民票がない場合、(1)就学通知が発行されない、(2)児童手当などの行政サービスを受けられない、(3)国民健康保険に加入できない、(4)免許証が取得できないなどの問題も生じ、結婚や就職で不利益を受けることも多い。また、出生届には「父母の名前と本籍」を記入する必要があるため、親子2代にわたって戸籍のない「無戸籍2世」も生まれやすくなる。このような状況の改善を求め、2008年(平成20)には、戸籍のない状態を経験した子供たちの親でつくる「民法772条による無戸籍児家族の会」が結成された。
法務省は嫡出推定規定による無戸籍が社会問題化したことを踏まえ、2007年、離婚後300日以内に生まれた子でも、離婚後に妊娠したことを医師が証明すれば、前夫の子としてではなく出生届を受理するよう通達を出した。また政府は2007年から2008年にかけて、日本国籍をもつなどの一定条件を満たすことで無戸籍者の住民票への記載を認め、旅券も発給できるようにした。さらに、児童手当や児童扶養手当の支給、保育所への受け入れ、新生児検診などの母子保健事業の実施などが可能であるとの通知を出した。最高裁判所は、それまで必要としてきた前夫の関与なしに、実父の子とできる「認知調停」を周知し、無戸籍2世については、法的手続きを経ずに戸籍をつくったり、無戸籍のまま結婚を認めたりする救済策を打ち出した。2014年には、法務省が民法の嫡出推定規定が原因で無戸籍となった人の情報収集を全国の法務局と市区町村に通知し、無戸籍の人に戸籍取得のための裁判や調停などの手続きをとるよう促した。このように、民法の嫡出推定規定そのものの見直しはほかの諸制度への影響が大きいため保留し、無戸籍問題には行政の運用面の改善で対応がなされている。
[編集部]
(2014-7-11)
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