焼成リン(燐)肥(読み)しょうせいりんぴ

改訂新版 世界大百科事典 「焼成リン(燐)肥」の意味・わかりやすい解説

焼成リン(燐)肥 (しょうせいりんぴ)
calcined phosphate

乾式リン酸肥料一種リン鉱石添加剤を加えて,空気中または水蒸気気流中で焼成し,主体鉱物のフッ素リン灰石を分解し,リンを可溶化する方法で製造する。工業的製法が確立されているのは,(1)炭酸ナトリウムと反応させレナニットCaNaPO4をつくる,(2)水蒸気との高温反応でフッ化水素の形で脱フツさせる,(3)上の(1)と(2)の折衷型,の3種である。(1)の例はドイツのレナニアリン肥Rhenania phosphate,(2)の例はアメリカの脱フツ焼成リン酸三石灰である。(3)は日本で工業化されており,狭義の焼成リン肥はこれを指す。リン鉱石に炭酸ナトリウムを加えリン酸液で造粒したものを,回転窯中で水蒸気を吹き込みつつ焼成する。反応機構は複雑であるが,主反応は

 Ca10(PO46F2+NaH2PO4+H2O─→[CaNaPO4-Ca3(PO42]固溶体+HF

と考えられる。全P2O5約41%,F≦0.1%を含有するく溶性リン酸塩が得られる。飼料用リン酸カルシウムまたは化成肥料の中間原料に用いられ,回収されたフッ化水素はフッ化物製造などに利用されている。
リン酸肥料
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百科事典マイペディア 「焼成リン(燐)肥」の意味・わかりやすい解説

焼成リン(燐)肥【しょうせいりんぴ】

リン酸肥料の一種。リン鉱石に添加剤を加えて焼成し,リン鉱石中のフッ素を追い出しリンを可溶化してつくる。灰白色粉末で,溶成リン肥と同様に用いられる。

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