玉勝間・玉籠(読み)たまかつま

精選版 日本国語大辞典 「玉勝間・玉籠」の意味・読み・例文・類語

たま‐かつま【玉勝間・玉籠】

[1] (「たま」は美称) 目の細かいかご。
[2]
① かごは、蓋と身が合わさるところから、「合ふ」と同音の「逢ふ」および地名「安倍」にかかる。
万葉(8C後)一二・二九一六「玉勝間(たまかつま)逢はむと云ふは誰なるか逢へる時さへ面隠(おもかく)しする」
② 地名「島熊山」にかかる。かかり方未詳。
※万葉(8C後)一二・三一九三「玉勝間(たまかつま)島熊山の夕暮に一人か君が山道越ゆらむ」
[3] (玉勝間) 江戸中期の随筆。一五巻一五冊。本居宣長著。寛政五年(一七九三)起稿し、享和元年(一八〇一)に没するまで書きつづけた。刊行は寛政七~文化九年(一七九五‐一八一二)。古道観、文学、言語学、古代制度、有職故実などが雅文体で記されており、宣長の人生観、学問、文学観などを知るのに好適である。
[補注](1)(一)について「詞林采葉抄‐七」は、「玉かつまとは櫛の古語也」というが、他例を見ない。「仙覚抄‐一二」に「阿波国風土記云〈略〉櫛笥者勝間云也」とあるので、あるいは、「詞林采葉抄」の記述は、櫛の入れ物と誤ったか。隙間がなく、蓋と身とがぴったりと合わさった上等の籠であり、そのため「たま」の美称が付されたものである。
(2)枕詞としては、「万葉集」には見られるが、中古以降は用いられなくなる。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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