玉緒の(読み)たまのおの

精選版 日本国語大辞典 「玉緒の」の意味・読み・例文・類語

たまのお‐の たまのを‥【玉緒の】

① 玉の緒が切れるの意で、「絶ゆ」にかかる。
万葉(8C後)三・四八一「新世(あらたよ)に 共にあらむと 玉緒(たまのをノ) 絶えじい妹と 結びてし 言は果さず」
② 玉の緒が長いようにの意で、「長し」にかかる。
※万葉(8C後)一〇・一九三六「相思はずあるらむ子故玉緒(たまのをの)長き春日を思ひ暮さく」
③ 玉の緒が短いようにの意で、「みじかし」にかかる。
古今(905‐914)雑体・一〇〇二「たまのをの 短き心 思ひあへず〈紀貫之〉」
④ 玉の緒が乱れるの意で、「思ひみだる」にかかる。
※万葉(8C後)七・一二八〇「うちひさす宮路を行くに吾が裳は破(や)れぬ 玉緒(たまのをの)思ひ乱れて家にあらましを」
⑤ 玉の緒を、「くくり寄す」「継ぐ」「間も置かず」にかかり、また、緒を縒(よ)るの意で「夜」に続く。
※万葉(8C後)一一・二七九〇「玉緒之(たまのをの)くくり寄せつつ末つひに行きは別れず同じ緒にあらむ」
拾遺(1005‐07頃か)恋三・八〇九「うつつには逢ふことかたし玉の緒の夜は絶えせず夢に見え南〈柿本人麻呂〉」
⑥ 玉の緒の「緒(を)」と同音を含む「惜し」にかかる。
※万葉(8C後)一九・四二一四「まそ鏡 見れども飽かず 珠緒之(たまのをの) 惜しき盛りに」
生命の意で、「現(うつ)し心」にかかる。
※万葉(8C後)一一・二七九二「玉緒之(たまのをの)うつし心や年月のゆきかはるまで妹に逢はざらむ」
⑧ 魂の緒の命の意で、「いのち」にかかる。
※続後撰(1251)恋二・七二一「逢ふことも誰がためなればたまのをの命も知らず物思ふらん〈寂延〉」
[補注]⑥は「生命の」の意であって枕詞ではないとする説もある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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