玉露(読み)ぎょくろ

精選版 日本国語大辞典 「玉露」の意味・読み・例文・類語

ぎょく‐ろ【玉露】

〘名〙
草木についた露を玉に見たてていう語。玉のように美しい露。
※江吏部集(1010‐11頃)下・奉同菊残留秋思詩「玉露延期携女几。金風忘暦在南陽」 〔梁昭明太子‐七契〕
② 香りが高く、甘味のあるもっとも優良の煎茶。日覆(ひおおい)をした茶畑からつみとった若葉を用いる。明治元年一八六八)、宇治の茶業者辻利右衛門が製し始めた。
※うもれ木(1892)〈樋口一葉〉七「今歳十八の出花の色、玉露(ギョクロ)の香り馥郁として、一段の見栄え流石に嬉しく」

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デジタル大辞泉 「玉露」の意味・読み・例文・類語

ぎょく‐ろ【玉露】

玉のように美しい露。
煎茶せんちゃの優良品。日覆いをして育てた茶樹の若葉を原料とする。天保年間(1830~1844)江戸の茶商山本嘉兵衛が宇治で作ったのに始まるという。
[類語]日本茶新茶麦茶煎茶抹茶碾き茶番茶緑茶グリーンティーほうじ茶玄米茶碾茶てんちゃ薄茶お薄濃い茶芽茶葉茶茎茶粉茶銘茶粗茶渋茶空茶からちゃ出涸らし

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「玉露」の意味・わかりやすい解説

玉露
ぎょくろ

日本の緑茶の最高級品。一番茶期に多肥栽培(おもに窒素肥料)をしたチャの成木園に覆いをして日光を遮り、緑が濃く柔らかく育った芽をていねいに摘採したものを原料とする。製茶の工程は、煎茶(せんちゃ)と同様に、蒸し→粗揉(そじゅう)→揉捻(じゅうねん)→中揉(ちゅうじゅう)→精揉(せいじゅう)→乾燥を経てつくられるが、葉質は柔らかく水分も多いので、もむ力と加熱を煎茶に比べると控え目にする。

 玉露が初めてつくられたのは、天保(てんぽう)年間(1830~44)に江戸の茶商山本山6代目の山本徳翁が宇治(京都府)に出たとき、てん茶の工程中のものをもんで乾燥、これを玉露と名づけ世に広めたことに始まるとされ、茶種としては比較的新しいものである。産地は宇治、八女(やめ)(福岡県)、岡部(静岡県)が有名であるが、生産量は日本茶全体の1%にも満たない。

 高級品の形状は細くよれて針状、締まりは煎茶より緩く、色は緑が濃くてつやがある。香りは覆(おお)い香(か)と称して海苔(のり)の高級品のような独得の香りがあって、すっきりしているものがよい。茶をいれたときの水色(すいしょく)は煎茶に比べると黄色の度合いは少なく淡黄緑色で、冷めると成分中にカフェインが多いため白濁してくる。なお成分中には普通煎茶の約倍量のアミノ酸(おもにテアニン)を含み、タンニンは少ないのでとくにうま味、甘味を強く感じる。少量を味わいながら飲む茶である。茶の量は3人分で約10グラム(大さじ3杯)、湯は55~60℃に冷ましたものを70ミリリットル注いで約2分半ゆっくり浸出させる。

[桑原穆夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「玉露」の意味・わかりやすい解説

玉露 (ぎょくろ)

緑茶の最高級品。1835年(天保6)ころ山本山6代目の山本徳翁が売り出したとも,68年(明治1)に辻利右衛門がはじめて作ったともいわれる。一番茶の新芽が伸びる時期に,茶畑の全面を葭簀(よしず)や化学繊維の黒網で20日間ほどおおい,太陽光線を1/10くらいにまで制限した下で育てて摘採する。製茶工程は基本的には煎茶と変わらないが,原料の葉が薄くやわらかなため,温度の調節や揉捻のしかたがむずかしい。製品は細長い針状をなし,色は青黒く光沢のあるのがよいとされる。茶畑の管理その他に多くの経費を要し,製品も高価である。産地としては,京都府の宇治,静岡県の岡部などが知られるが,近年は福岡県八女(やめ)地方の生産の伸びが著しい。中国では湖北省西部の山間地,恩施というところで少量ながら作られている。

 玉露ののみ方は,葉に含まれるアミノ酸の甘味とタンニンの苦渋味をほどよくひきだすところにこつがある。そのため,一煎目は40℃程度のぬるい湯で3分ほど浸出させて甘味を,二煎目は60℃程度でさわやかな苦味を,三煎目は80℃の湯で快い渋味をと,三煎まで楽しみたい。はじめに熱湯を注いでしまうと,一度にすべての味が出て玉露の美味は失われ,二煎目もきかなくなる。ふつう,小型のきゅうすと茶わんを使い,1人分として4g茶葉を入れ,それが浸る程度の湯を注いで浸出させる。
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百科事典マイペディア 「玉露」の意味・わかりやすい解説

玉露【ぎょくろ】

緑茶の最高級品。新芽が伸びて,摘取り2週間前ごろに茶園に覆(おお)いをかけて日光をさえぎり,いわゆる覆下園(おいしたえん)としてから摘み取る。煎茶と同様に仕上げるが,強い蒸気でさっと蒸しあげる。緑色が濃く香味も高くテアニン(アミノ酸の一種,茶のうま味成分)が多い。京都府の宇治,静岡県の岡部,福岡県の八女(やめ)などが主産地。低温(55℃前後)の湯を使用する。
→関連項目岡部[町]

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飲み物がわかる辞典 「玉露」の解説

ぎょくろ【玉露】


緑茶の一種。春にその年初めての新芽が出たら、よしずや稲わら、黒の寒冷紗(かんれいしゃ)(目の粗い薄地の織物)などで茶園をおおって20日程度直射日光を遮って育てた若い芽を用いて、煎茶と同様の製法で作ったもの。一般的な煎茶に比べ、茶のうま味成分であるテアニンの含有量が多く、渋味成分であるカテキンの含有量は少ない。また、葉緑素も増えるので、緑色が濃く鮮やかで、香りも独特のものになる。年に1回しか摘採できず、手間もかかるため、最高級の緑茶とされる。◇天保年間(1830~1844)に江戸の茶商「山本山」(現株式会社 山本山)の6代目、山本嘉兵衛徳翁が、京都・宇治で考案したとされる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「玉露」の意味・わかりやすい解説

玉露
ぎょくろ

緑茶のなかの最高級品で,独特の香味,甘味を有する。肥料を十分に施した老茶樹を選び,春季発芽の2週間ぐらい前から簀 (す) やわらで覆い,日光を制限,こうして得られた柔らかで長く伸びた濃緑色の若茶葉を原料とし,煎茶とほぼ同様の方法で製茶する。品質は濃深緑色でつやがあり,浸出した茶の色は淡金色でわずかに青みがかり,清澄なものがよいとされ,味はうまみと甘味がほどよく加味され,苦渋味のそれほど強くないのがよいとされている。玉露のうまみは 55~60℃の温湯で浸出されるので,この温度よりわずかに高い温度の湯を用いたときが最も美味であるといわれる。

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普及版 字通 「玉露」の読み・字形・画数・意味

【玉露】ぎよくろ

美しい露。唐・杜甫〔秋興、八首、一〕詩 玉露傷(てうしやう)す、楓樹林 巫山巫峽、氣

字通「玉」の項目を見る

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「玉露」の解説

ぎょくろ【玉露】

鹿児島の芋焼酎。酒名は、茶の玉露にちなみ、焼酎界の最高峰を目指して命名。霧島連峰の伏流水と白麹を用いて、昔ながらの大甕で時間をかけて発酵させる。蒸留法は常圧蒸留。原料はコガネセンガン、米麹。アルコール度数25%。蔵元の「中村酒造場」は明治21年(1888)創業。所在地は霧島市国分湊。

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デジタル大辞泉プラス 「玉露」の解説

玉露

鹿児島県、有限会社中村酒造場が製造・販売する芋焼酎。「白」「黒」「本甕仕込」などがある。

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栄養・生化学辞典 「玉露」の解説

玉露

 日本茶の最高級品とされ,光を覆って栽培した葉を用いて製造する.

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世界大百科事典(旧版)内の玉露の言及

【チャ(茶)】より

…園当り収量(製茶量)は,摘採対象の芽の生育程度,摘採方法によって大きく異なるが,日本では10a当り300~400kg,インドなどで120~150kgが標準である。 特殊な栽培法として,摘採前約20日間,わら,こもなどで95%程度遮光する覆下(おいした∥おおいした)園があり,玉露,てん(碾)茶など高級茶を生産する。また,防霜も兼ね,寒冷紗(しや)などで60%程度遮光する場合もあり,このような園から,かぶせ茶が生産される。…

【緑茶】より

…中国の緑茶は後者による釜炒製で,日本では九州の一部でこの釜炒茶が作られている。 日本緑茶には,煎茶,玉露,挽茶(ひきちや),番茶,玉緑茶などの種類があり,玉緑茶以外はすべて蒸製である。玉緑茶は釜炒製で,佐賀県の嬉野(うれしの)茶,熊本・宮崎両県の青柳茶が有名である。…

※「玉露」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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