現在・見在(読み)げんざい

精選版 日本国語大辞典 「現在・見在」の意味・読み・例文・類語

げん‐ざい【現在・見在】

〘名〙
[一] 時間の流れを三つに区分した一つ。過去と未来との間。
① 仏語。三世の一つ。今現に生を受けているこの世。現世
海道記(1223頃)花京の老母「若(もし)是過去の福因を植ゑずして現在の貧果を得たるか」 〔倶舎論‐二〇〕
② 過去と未来のさかいめ。時の流れの中で、過去と異なり今、目の前という短い時をいう場合と、今に近い過去や未来を含めたある期間をいう場合とがある。いま。
※六如庵詩鈔‐二編(1797)五・甲寅中秋〈略〉泛舟遊巨椋湖各賦「当筵須見在歓、身後浮名酒一中」
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉三「そのころの幸福は現在の幸福ではなくて、未来の幸福の影を楽しむ幸福で」
③ 変動するものの状態をある時点で記述する際、その時点を示す語に添える。「一月一日現在」
文法で、用言を、現在または時間を越えた作用や状態を表わすものとして用いる語法。また、英語やフランス語などの動詞の時制で、現在形の用法
※密伝抄(1455頃か)「惣而しは過去のし・未来のし・現在のしとて此等也」
[二] (━する) 目の前にあること。現に存在すること。また、その場にありあわせること。
※玉葉‐嘉応二年(1170)一〇月二五日「寛治御調度、于今見在者、被彼、不其難
風姿花伝(1400‐02頃)四「我はこれ大国秦始皇の再誕なり。日域に機縁ありて、今現在(ゲンザイ)す」 〔史記‐斉悼恵王世家〕
[三] (血縁肉親などの関係に関して) 目の前にあって疑いのないさま。まぎれもない事実であるさま。
① (「の」を伴って連体詞的に用いられて) まぎれもない。正真正銘の。
平治(1220頃か)中「いかに勲功を望めばとて、相伝の主を討ち現在の聟を害しける忠宗が所存をば」
② (副詞的に用いられて) たしかなさま。疑いもないこと。
説経節・説経苅萱(1631)下「ははがたいなゐに、七月はんにおすてあったるわかなれば、けんさいちちにあふたりとも、わがちちともまたわがことも、ゑみしるまひよ」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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