甑島列島(読み)こしきじまれっとう

精選版 日本国語大辞典 「甑島列島」の意味・読み・例文・類語

こしきじま‐れっとう ‥レッタウ【甑島列島】

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デジタル大辞泉 「甑島列島」の意味・読み・例文・類語

こしきしま‐れっとう〔‐レツタウ〕【甑島列島】

鹿児島県西部東シナ海にある列島。かみ甑島・なか甑島・しも甑島および付近の小島からなる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「甑島列島」の意味・わかりやすい解説

甑島列島
こしきじまれっとう

甑列島とも、単に甑島ともよぶ。また、甑島の読みは「こしきしま」とも。鹿児島県いちき串木野(くしきの)市西方洋上約35キロメートルの北緯31度53分、東経129度56分付近から南西に約38キロメートルにわたって延びる東シナ海上の島嶼(とうしょ)。上甑島(かみこしきじま)、中甑島(なかこしきじま)、下甑島(しもこしきじま)の主3島と小属島群よりなり、薩摩川内市(さつませんだいし)に属する。総面積約118平方キロメートルで、上甑島(44.14平方キロメートル)、中甑島(7.30平方キロメートル)、下甑島(66.12平方キロメートル)。総人口5854(2009)。甑島国定公園(こしきしまこくていこうえん)に指定される。

 上甑島は最高点423メートル(遠目木山(とおめきやま))、湾入や入り江のもっとも多い島で、それらが砂礫(されき)により閉塞(へいそく)されてできた甑四湖(海鼠(なまこ)池、貝池、鍬崎(かざき)池、須口池)などの潟湖(せきこ)(ラグーン)がある。北東端の陸繋島(りくけいとう)も海岸線の地形を複雑にしている。北東部を里(さと)地区が占め、集落数2、南西部と中甑島を上甑地区が占め、おもな集落数6である。下甑島はほかの2島より山がちで最高点は604メートルの尾岳であるが、ほかに300メートル以上の山が海岸に迫り平地はごく少ない。北部鹿島地区、南部を下甑地区が占め、集落数は2と8。上甑島の地質は中生代御所浦(ごしょうら)層群、古第三紀の下島層群と一部に花崗(かこう)岩。中甑島は前二者のみからなる。下甑島は御所浦層群と花崗岩よりなる。気候は温暖で、アコウガジュマルヘゴも自生する。カノコユリは特産物として有名。近海はブリ、タイ、イワシ、サバなどの漁獲が多く、好漁場となっている。串木野港より各島へ高速船などでの船便が毎日ある。

[塚田公彦]

『川崎大十著『甑島編年史研究資料』(1961・国土地理協会)』『『甑島報告書』(1969・鹿児島女子短期大学)』


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改訂新版 世界大百科事典 「甑島列島」の意味・わかりやすい解説

甑島列島 (こしきじまれっとう)

鹿児島県いちき串木野市の西方約45kmの東シナ海に,北東より南西に連なる列島。甑列島とも呼ぶ。北東から上甑島(45km2),中甑島(7km2),下甑島(66km2)の3島とそれらの付属島よりなる。串木野港より定期船の便がある。島名は中甑島北端沖合の沖の串瀬に浮かぶ巨岩が甑の形をしており,島民がこれを甑大明神として尊崇したことによるという。全島山がちでほとんど平地がなく,海岸線は西部および南部では海から切り立った急崖をなし,また他では複雑な凸凹に富んだリアス式海岸となり,風光がよい。上甑島北部には長目ノ浜という延長4kmの砂州があり,その内側には須口池,鍬崎池,貝池,海鼠(なまこ)池などの湖が並んでいるが,これらは海岸の入江が沿岸流で運ばれた土砂で入口をふさがれたもので,このため湖面の高さが海面の高さ,すなわち潮の干満と一致するという珍しい湖である。平地が少ないため集落が分散しており,下甑島の大部分では一つの集落から隣の集落に行くには必ず峠を越えなければならない。このため以前は交通が非常に不便だったが,現在は一部にバスが通るようになった。

 生産の中心は水産業で,以前はブリ漁が盛んであり,多くの大尽を生んだが,その後衰え,人口が激減した。しかしなお定置網をはじめ,棒受網,刺網,磯タコ網などによる沿岸漁業はよく行われており,特にブリ定置網は県下で独占的な地位を占めている。

 中心集落は里,中甑,平良(たいら),手打などの諸港で,港湾の整備,製氷・冷蔵施設の設置などが進められている。水産業を補うものとして農業があるが,もともと平地が少ないので畑は斜面を無理に切り開いた段畑で,耕作が困難であり,生産力が低い。おもな作物はサツマイモと麦で,サツマイモの切干しは現金収入源になっている。他に牛,豚の肥育も行われるが,特色あるのはユリ根の採取である。これは全島,特に中甑島に自生するカノコユリの根を採取,出荷するもので,欧米にまで送られる。また7月中旬から8月上旬までの開花期は見事な景観を示す。

 行政上,列島は北から薩摩郡里村,上甑村,鹿島村,下甑村の4ヵ村に分かれていたが,2004年合併により薩摩川内市の一部となった。旧里村は上甑島の東部を占め,上甑島の中央および西部と中甑島が旧上甑村であり,下甑島の大部分が旧下甑村であるが,その北部が旧鹿島村をつくる。このように区分がやや複雑なのは平地が少なく,集落が孤立しているためと思われる。特に旧里村は一村一集落で,1891年に上甑村から分離したのであるが,甑島の表玄関として独自の経済力をもつためであろう。旧上甑村は水産業が盛んで,カノコユリの採取の一中心でもある。旧鹿島村は1949年に下甑村から分村した新しい村である。旧下甑村は手打,青瀬,長浜などの港での水産業のほか,海水浴場として有名な所があり,海岸の海食急崖や奇岩の織りなす風景に特色がある。
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百科事典マイペディア 「甑島列島」の意味・わかりやすい解説

甑島列島【こしきじまれっとう】

甑列島,甑島ともよぶ。鹿児島県串木野(くしきの)港の西,東シナ海上約35kmに北東から南西に並ぶ島嶼(とうしょ)群。北から上甑島(45.08km2)・中甑島(7.29km2)・下甑島(66.27km2)が並び,周辺に属島が点在する。島名は上甑島中甑にある甑形の大岩(甑岩)に由来すると伝える。鹿児島県里(さと)村・上甑村・鹿島(かしま)村・下甑村(4村とも現・薩摩川内市)がある。全島山がちでほとんど平地がなく,海岸線は西部および南部では海から切り立った急崖(きゅうがい)をなし,他所も凹凸に富んだリアス海岸で,風光に恵まれる。上甑島北部に長目(ながめ)の浜(延長4km)と称する砂礫洲があり,その内側には海鼠(なまこ)池など甑四湖と呼ばれる汽水湖がある。なお地質上,上甑島と下甑島では断層の走行がまったく異なり,前者が北東−南西方向なのに対し,後者は北西−南東方向となっている。 薩摩国甑島郡に属した。古くから東シナ海上の交通の要地で,遣唐使船が来着したのをはじめ,異国船を含む船が来着し,近海で遭難することもあった。中世は島津荘寄郡の甑島が成立,はじめ千葉氏が地頭であったが,宝治合戦後小川氏が補任された。近世は鹿児島藩の外城(とじょう)の一つ,甑島郷となった。普通は上甑・下甑に2分して把握されたが,郷内には14ヵ村があった。イワシ漁が盛んで,特産品にナマコがあった。串木野港より定期船の便がある。各種網漁による漁業が盛んなほか,サツマイモ,カノコユリなどを栽培。観光遊覧船も就航している。気候は対馬海流の影響から暖かく,ヘゴ自生北限地帯(国指定天然記念物)の一つとなっているほか,常緑広葉樹林にすむ日本特産種のカラスバト(同記念物)が生息する。2015年3月,一帯が甑島国定公園に指定。
→関連項目鹿児島[県]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「甑島列島」の意味・わかりやすい解説

甑島列島
こしきしまれっとう

鹿児島県西部,薩摩半島基部のいちき串木野市西方の東シナ海上にある島嶼群。上甑島中甑島下甑島および周囲の小島群からなる。行政上は薩摩川内市に属する。上甑島と下甑島にはヘゴ自生地北限地帯があり国の天然記念物となっている。また列島の一部は甑島県立自然公園に属する。面積 119.07km2

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世界大百科事典(旧版)内の甑島列島の言及

【里[村]】より

…鹿児島県薩摩郡,甑島(こしきじま)列島北端の上甑島東部を占める村。人口1676(1995)。…

※「甑島列島」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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