生物兵器禁止条約(読み)せいぶつへいききんしじょうやく(英語表記)Biological Weapons Convention; BWC

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「生物兵器禁止条約」の意味・わかりやすい解説

生物兵器禁止条約
せいぶつへいききんしじょうやく
Biological Weapons Convention; BWC

生物兵器の開発,生産,貯蔵を禁止するとともに,すでに保有されている生物兵器廃棄を目的とする条約。正式には「細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発,生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約」Convention on the Prohibition of the Development, Production and Stockpiling of Bacteriological (Biological) and Toxin Weapons and on Their Destruction。1972年4月10日に署名が開始され,1975年3月26日に発効前文と本文 15ヵ条からなり,存続期間は無期限。各締約国は,微生物剤その他の生物剤,または毒素,またはそれらの使用のための兵器や運搬手段の開発,生産,貯蔵,取得,保有をしないことを約束し(1条),さらに条約発効後遅くとも 9ヵ月以内に,自国が保持する生物剤,毒素,兵器,運搬手段などを廃棄することを約束している(2条)。また各締約国は,その領域内または管轄下にある上記生物剤などの開発その他の禁止に必要な措置をとることも定めている(4条)。
1925年のジュネーブ・ガス議定書以降,生物兵器の禁止は長らく化学兵器の禁止とともに討議されてきたが(→生物・化学兵器の禁止),最終的に後者を切り離したかたちで条約化された(→化学兵器禁止条約)。本条約は,生物・毒素兵器を包括的に禁止した唯一の多国間条約である。しかし,アメリカ合衆国ソビエト連邦などがこの条約を結んだのは,生物兵器,毒素兵器の軍事利用価値を化学兵器ほど重視していないからであるとみられた。なおフランスと中国は,この条約が化学兵器禁止を含めていないことなどを理由に加入を拒んでいたが,1984年に加入した。日本は 1982年批准。2015年現在の締約国数は 173。(→大量破壊兵器

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知恵蔵 「生物兵器禁止条約」の解説

生物兵器禁止条約

生物兵器および毒素兵器の開発、生産、貯蔵を禁止し、現有兵器は9カ月以内に廃棄することを定めた条約(同兵器の使用はすでに1925年のジュネーブ議定書で禁止)。72年調印、75年発効。生物兵器は、技術進歩と途上国等への技術移転が進むなか、イラクなどで開発の疑いが生じた。しかし条約には、罰則、違反行為を調査するための検証規定などがないため、95年に検証議定書交渉を開始。しかし議定書の議長草案に対し、米政府は、2001年7月、違反発見に不備があり、企業秘密が漏れる、として交渉拒否。ところが9.11事件以後、米国が生物兵器の攻撃対象となる不安が高まり、さらに炭疽菌事件が拡大、ブッシュ政権は一転して、同年11月の運用検討会議に条約の強化策を提唱、さらに同会議の最終宣言に多国間の議定書交渉の終了を盛り込むよう主張し、各国が一斉に反発、議定書交渉は合意のないまま頓挫。締結国は155(05年12月現在)。

(坂本義和 東京大学名誉教授 / 中村研一 北海道大学教授 / 2007年)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「生物兵器禁止条約」の意味・わかりやすい解説

生物兵器禁止条約
せいぶつへいききんしじょうやく

生物毒素兵器禁止条約

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