日本大百科全書(ニッポニカ) 「生産性(産業)」の意味・わかりやすい解説
生産性(産業)
せいさんせい
productivity
生産の効率を示す指標。「一定の財貨量の生産と、一ないしそれ以上の投入要素量との間の比」(アメリカ労働統計局)、「産出物を生産要素の一つによって割り算して得られた商」(OECD)などと定義される。これらの基本となる算式は、
生産性=産出÷投入
として示される。
生産性の具体的測定指標には、さまざまなものがある。それはまず、物的生産性と価値的生産性に大別される。前者は産出に物量を用い、後者は価値量を用いる。
[森本三男]
物的生産性
生産の技術的効率を測定する指標である。それはさらに、投入に個別生産要素を用いる要素生産性と、生産要素全体を用いる総合生産性に分けられる。要素生産性の代表的なものは労働生産性と資本生産性であり、それぞれ次式で示される。
労働生産性=生産量÷労働量
資本生産性=生産量÷有形固定資産
労働生産性は、測定が容易である、比較可能性が大である、技術進歩を反映する、などの理由により、もっとも重要な要素生産性指標とされる。なおこの式の労働量には、従業員数、労働時間などが用いられる。物的生産性としての総合生産性の一般式は、次のように示される。
総合生産性
=生産量÷同一単位に換算した生産要素全体の投入量
これには、全投入生産要素を何に換算するかによって、(1)総労働生産性と(2)総コスト生産性とがある。それぞれは以下のように示される。
(1)総労働生産性
=生産量÷労働量に換算した全生産要素
=生産量÷(投入労働量+換算労働量)
換算労働量
=(原材料費+諸経費+減価償却費+その他)÷標準賃金
(2)総コスト生産性
=生産量÷総コスト(コストに換算した全生産要素)
総コスト
=Σ(各生産要素の基準時点単価×期間内使用量)
[森本三男]
価値的生産性
物的生産性と対照される価値的生産性は、物的生産性の測定が困難な異種の製品・事業を総合的に包括し、経営活動の成果を統合的に示す。その典型的指標は付加価値生産性であり、次の式で示される。
付加価値生産性
=付加価値÷従業員数
付加価値は、次の(1)控除法と(2)加算法のいずれかによって計算される。
(1)=売上高-原材料費
(2)=利益+人件費+支払利子+賃借料+租税+減価償却費
生産性とくに付加価値生産性を向上させるには、付加価値を大にする、従業員数を小にする、のいずれか、または双方を実現すればよい。付加価値を大にするには、売上高を増大する、原材料費を節減する、付加価値率の高い製品を開発する、などが必要である。全体としてもっとも重要なことは、労働装備率(新鋭設備、省力化、合理化)を高めることと、資本生産性(設備・機械等の稼動率)を向上させることである。
[森本三男]