生駒(市)(読み)いこま

日本大百科全書(ニッポニカ) 「生駒(市)」の意味・わかりやすい解説

生駒(市)
いこま

奈良県北西端にある市。1971年(昭和46)市制施行。市域生駒山地東斜面から矢田丘陵西斜面にかけて広がり、南北に細長く、北部の富雄(とみお)川上流域と南部の生駒川(竜田川)上流域の2地域に分かれる。中央部を東西に近畿日本鉄道奈良線・けいはんな線、阪奈道路が走り、北に国道163号、南に国道308号、南北に168号が通じる。また、近鉄生駒駅から生駒線が南へ延び、JR関西本線王寺駅(王寺町)に接続する。かつては農山村であったが、1914年(大正3)に当時日本最長の複線トンネルの生駒トンネルが完成し、大阪―奈良間に大阪電気軌道線(現、近鉄奈良線)が開通すると、生駒山の東山腹にある名刹(めいさつ)宝山寺(ほうざんじ)の門前町として急速に発展した。その後も山上へのケーブル、信貴(しぎ)生駒電鉄(現、近鉄生駒線)などが開通し、第二次世界大戦後、阪奈道路、新生駒トンネルが完成すると、大阪への時間距離はいっそう短縮され、大阪からの人口流入が行われ、ベッドタウン化が進んだ。1986年に近鉄東大阪線(2006年けいはんな線に改称)、1997年に第二阪奈有料道路が開通した。奈良先端科学技術大学院大学や高山(たかやま)サイエンスプラザのほか、民間の研究施設も相次いで開設され、研究学園都市としても発展している。農業はきわめて零細で農地は宅地開発で減少する一方である。北部の高山地区では編み針、竹製茶道具生産が盛んで、とくに室町時代に高山宗砌(そうぜい)が始めたという茶筅(ちゃせん)製造は有名である。生駒山は林立するテレビ塔と100万ドルの夜景で知られ、生駒山上遊園地がある。その中腹にある宝山寺は真言律宗の大本山で、聖天堂(しょうてんどう)の歓喜天(かんぎてん)は「生駒の聖天さん」として親しまれている。山麓(さんろく)には大規模な生駒山麓公園が広がる。一帯金剛生駒紀泉国定公園に含まれる。また、市の北西部には黒添(くろんど)池があり、その周囲は自然公園になっている。長福寺(本堂は国指定重要文化財)、長弓寺(ちょうきゅうじ)(本堂は国宝)などの古寺がある。面積53.15平方キロメートル、人口11万6675(2020)。

[菊地一郎]

『『生駒市誌』全6巻(1974~1985・生駒市)』


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