田宮虎彦(読み)タミヤトラヒコ

デジタル大辞泉 「田宮虎彦」の意味・読み・例文・類語

たみや‐とらひこ【田宮虎彦】

[1911~1988]小説家東京の生まれ。庶民的なヒューマニズムに貫かれた多く作品を書いた。作「足摺岬」「落城」「絵本」など。

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精選版 日本国語大辞典 「田宮虎彦」の意味・読み・例文・類語

たみや‐とらひこ【田宮虎彦】

小説家。東京生まれ。昭和二二年(一九四七)、「霧の中」が認められ、その後「末期の水」「落城」などの歴史小説発表。また、「足摺岬」「絵本」などの自伝的な作品にも独自の境地を拓いた。ほかに「異端の子」「木の実のとき」など。明治四四~昭和六三年(一九一一‐八八

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「田宮虎彦」の意味・わかりやすい解説

田宮虎彦
たみやとらひこ
(1911―1988)

小説家。東京に生まれる。神戸一中、三高を経て、1936年(昭和11)東京帝国大学国文科卒業。在学中より『日歴』『人民文庫』に参加。創作に励むこと十年、自己の鉱脈を発見したのが、会津(あいづ)士族の数奇な運命を描いた『霧の中』(1947)であり、ついで戊辰(ぼしん)の戦(いくさ)と太平洋戦争を表裏にもった『落城』(1949)連作や、戦国時代を描く『鷺(さぎ)』(1950)などの歴史小説である。また、昭和10年代前後の暗い青春時代を扱った『足摺岬(あしずりみさき)』(1949)や『菊坂』『絵本』(ともに1950)などの半自伝風のもの、現代社会の矛盾を鋭くつく『異端の子』(1952)、『沖縄手記から』(1972)がある。その文学は、かけがえのない命が失われた憤りを核に、暗く重く、せつない叙情に主調がある。

[山崎一穎]

『『田宮虎彦作品集』全六巻(1956~57・光文社)』『『筑摩現代文学大系64 田宮虎彦他集』(1979・筑摩書房)』『猪野謙二著『近代日本文学史研究』(1954・未来社)』『『足摺岬・絵本』(角川文庫)』『『落城・足摺岬』(新潮文庫)』

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改訂新版 世界大百科事典 「田宮虎彦」の意味・わかりやすい解説

田宮虎彦 (たみやとらひこ)
生没年:1911-88(明治44-昭和63)

小説家。東京生れ。神戸一中,三高を経て東大国文科卒業。戦前に《日暦》《人民文庫》の同人であり,《無花果》(1935)などを発表したが,本格的に認められたのは《落城》(1949)に代表される戦後の歴史小説によってである。さらに半自伝的作品《足摺岬(あしずりみさき)》(1949),《絵本》《菊坂》(ともに1950)などを収めた短編集《絵本》(1951)によって毎日出版文化賞を受賞。胃癌で死んだ妻千代との書簡集《愛のかたみ》(1957)は広く読まれた。《沖縄の手記から》(1972)は後期の代表作とされる。個人の心情の真実を核とした情感ある緊張した文体と評価されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「田宮虎彦」の意味・わかりやすい解説

田宮虎彦
たみやとらひこ

[生]1911.8.5. 東京
[没]1988.4.9. 東京
小説家。第三高等学校を経て 1936年東京大学国文学科卒業。同年武田麟太郎主宰の文芸誌『人民文庫』の創刊に参加,まもなく検挙されて職を転々とした。第2次世界大戦後『霧の中』 (1947) で注目を浴び,『落城』 (49) ,『異母兄弟』 (49) ,『足摺岬』 (49) ,『菊坂』 (50) ,『絵本』 (50) などの代表作を次々に発表。ほかに『異端の子』 (52) ,『銀 (しろがね) 心中』 (52) ,胃癌のため没した妻千代との書簡集『愛のかたみ』 (57) などがある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「田宮虎彦」の解説

田宮虎彦 たみや-とらひこ

1911-1988 昭和時代の小説家。
明治44年8月5日生まれ。東京帝大在学中から「日暦」「人民文庫」に参加。昭和22年会津の没落士族をえがいた「霧の中」で注目される。「落城」「鷺(さぎ)」などの歴史小説,「足摺岬(あしずりみさき)」「絵本」などの半自伝的作品,社会的な視野をもつ「異端の子」などを発表した。昭和63年4月9日自殺。76歳。東京出身。
【格言など】青年のもつエネルギーは,傷つくことをおそれているようでは何事もなし得ない(「失われた青春」)

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百科事典マイペディア 「田宮虎彦」の意味・わかりやすい解説

田宮虎彦【たみやとらひこ】

小説家。東京生れ。東大国文卒。戦前《人民文庫》の同人として作品を発表していたが,1947年,歴史小説《霧の中》で本格的に文壇に認められた。以後歴史小説《落城》や半自伝的小説《足摺岬》や短編集《絵本》《或る女の生涯》《異端の子》《沖縄の手記から》などを書く。一種の運命観と庶民的なヒューマニズムに貫かれた作品が多い。

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