田舎源氏(歌舞伎舞踊劇)(読み)いなかげんじ

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

田舎源氏(歌舞伎舞踊劇)
いなかげんじ

歌舞伎(かぶき)舞踊劇。清元。1幕。本名題『名夕顔雨の旧寺(なにゆうがおあめのふるでら)』または『田舎源氏露東雲(つゆのしののめ)』。3世桜田治助作。1851年(嘉永4)9月江戸・市村座で8世市川団十郎の光氏(みつうじ)、初世坂東(ばんどう)しうかの黄昏(たそがれ)、7世市川団蔵(当時九蔵)の東雲(しののめ)によって初演。柳亭種彦(りゅうていたねひこ)の小説『偐紫(にせむらさき)田舎源氏』を劇化した『源氏模様娘雛形(げんじもようふりそでひながた)』の一場面が舞踊劇として残ったもので、初演は富本(とみもと)(名見崎(なみざき)友治作曲)で演じたが、明治になって清元に改調された。足利(あしかが)光氏は盗まれた宝剣を尋ねて流浪し、舞の師匠東雲の娘黄昏とともに野中古寺に泊まる。悪人にくみする東雲は、鬼女の面をかぶって光氏を襲うが、黄昏が自害して母をいさめるので、東雲も改心し宝剣の所在を教えて自害する。初めの道行の艶美(えんび)、古寺で『葵上(あおいのうえ)』の後ジテを装った東雲が御所車の背景から出現するすごみなど、歌川国貞(うたがわくにさだ)の描いた草双紙の気分で一貫している。

[松井俊諭]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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