申込み・承諾(読み)もうしこみしょうだく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「申込み・承諾」の意味・わかりやすい解説

申込み・承諾
もうしこみしょうだく

合意によって契約成立させる意思表示のこと。契約は原則として申込みと承諾によって成立する。申込みおよび承諾の法律的性質は契約の成立に向けてなされる意思表示である。申込みに対して承諾があると契約が成立する。求人広告や店頭での客寄せなどは、客に申込みをさせるための申込みの誘引といわれ、申込みとは区別される。

 申込みはそれ自体で権利義務変動を生ずるものではないが、契約の申込みは自由に撤回できない(これを申込みの拘束力という)。承諾期間を定めた申込みはその期間内撤回ができない。承諾期間内に申込者が承諾の通知を受けなければ申込みは効力を失うが、延着した承諾の通知が、通常であれば承諾期間内に到達するように発送したと認められるときは、申込者は遅滞なく延着の通知を発しないと、承諾は延着しなかったとみなされて契約は成立する。隔地者間では承諾の通知を発したときに契約は成立する。変更を加えた承諾は申込みを拒絶し新たな申込みをしたものとみなされる(民法521条~528条)。

 申込みが拘束力をもつという原則に対する例外が、消費者保護等、民法の特別法に規定されているクーリング・オフ制度である。熟慮期間とか、冷却期間などと訳されている。セールスマンが突然家庭に訪ねてきたときなどは、購入者は必要な買い物かどうか、よい商品かどうかを判断する何の準備もないままに、割賦弁済や信販会社の立替払いなどで安易に購入してしまい、また、販売方法も往々にして攻撃的なことが多い。そこでこのような場合の消費者(購入者、購入の申込者)を保護するために、割賦販売や訪問販売などの場合に、一定期間内は無条件に申込みの撤回(および契約の解除)を認めることとした(割賦販売法35条の3の10、11、12、特定商取引法9条・24条・40条・48条・58条、宅地建物取引業法37条の2など)。たとえば割賦販売など多くは8日、連鎖販売取引、すなわちマルチ商法などでは20日。なお、訪問販売で通常必要とされる量を著しく超えた契約をしたときは、特別に必要な事情があったときを除いて1年としている。

[伊藤高義]

『内田貴著『民法Ⅱ 第2版 債権各論』(2007・東京大学出版会)』

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