白丁(はくてい 朝鮮)(読み)はくてい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「白丁(はくてい 朝鮮)」の意味・わかりやすい解説

白丁(はくてい 朝鮮)
はくてい

朝鮮身分呼称。本来、中国律令(りつれい)制の用語で、朝鮮では高麗(こうらい)時代(918~1392)から記録に現れる。高麗の白丁は、国家の支配下の民衆のうち、軍役や駅の役などの特定職役を負担せず、したがって、その代償としての土地の支給も受けない人々で、自己の保有地(民田)を耕作し、国家に対して田税、貢物、各種の一般的徭役(ようえき)などを負担していた。ただ、身分的には、良人(りょうじん)に限定されえない面をもっていた。しかし、高麗中期以後、王朝が良人自営農民を支配の基礎とするようになると、白丁もそれを意味するに至った。1424年の李朝(りちょう)世宗による、才人、禾尺(かしゃく)(従来、定住せず、狩猟、と畜、柳器製造などに従事していた)の白丁への改称も、本来彼らの良人自営農民化を意味した。ところが、この政策は成功せず、逆に、新たに白丁となった彼らに対する官民の賤視(せんし)、差別を増幅させた。こうして、これ以後しだいに、白丁は特定の被賤視・被差別民(才人、禾尺)の呼称に転化し定着していった。1894年の甲午(こうご)改革で身分解放されたが、差別はなくならず1923年に衡平社を結成し解放運動を開始した。

[北村秀人]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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