省(中国の行政区画)(読み)しょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「省(中国の行政区画)」の意味・わかりやすい解説

省(中国の行政区画)
しょう

中国の最高行政区画呼称。省とはもともと宮中のことで、漢代には省中ともいったが、3世紀の魏(ぎ)・晋(しん)のころから、宮中に置かれた官庁の呼称となった。13世紀の元代に中央の行政官庁として中書省を設け、国都(現北京(ペキン))に近い河北、山東山西の地方の直轄を兼ね、その他の各地に、地方行政官庁として、中書省の地方出張所を意味する行中書省を置き、行省と略称し、これをその管轄地域の呼称ともした。嶺北(れいほく/リーペイ)、遼陽(りょうよう/リヤオニン)、河南江北、陝西(せんせい/シャンシー)、甘粛(かんしゅく/カンスー)、四川(しせん/スーチョワン)、雲南(うんなん/ユンナン)、江浙(こうせつ/チヤンチョー)、江西(こうせい/チヤンシー)、湖広(ここう/フーコワン)の10行省である。こうして省は初めて地方行政区画の呼称となった。14世紀の明(みん)代では、中書省も行省も廃し、地方の要地に三司(民政の布政使司、警察の按察(あんさつ)使司、軍事の指揮使司)を設けたが、その管轄地域は俗に省とよばれた。初め、三司を統括する官を置かず、ときに中央から巡撫(じゅんぶ)、総督を派遣したが、やがてこれを1省または2省を管理する常駐官とした。17世紀、清(しん)代では省を地方行政区画として復活、巡撫、総督を地方長官とし、その駐在地を省会といい、北京周辺の直隷(ちょくれい)省のほか、地方を江蘇(こうそ/チヤンスー)、安徽(あんき/アンホイ)、山東(さんとう/シャントン)、山西(さんせい/シャンシー)、河南(かなん/ホーナン)、陝西、甘粛、福建(ふっけん/フーチエン)、浙江(せっこう/チョーチヤン)、江西、湖北(こほく/フーペイ)、湖南(こなん/フーナン)、四川、広東(カントン)、広西(こうせい/カンシー)、雲南、貴州(きしゅう/コイチョウ)に分けた。これを本部18省という。のちに周辺地域を中央化すると、遼寧(りょうねい/リヤオニン)、吉林(きつりん/チーリン)、黒竜江(こくりゅうこう/ヘイロンチヤン)、新疆(しんきょう/シンチヤン)など10省が加わり計28省となった。こうして省は行政区画の呼称として定着し、中華民国、中華人民共和国に及ぶが、その間、周辺部の省の改廃が行われ、省のほかに、少数民族のために設定された自治区(内モンゴル自治区など5自治区)も省とみなすべきであり、すべて27省に分けられていることになる。一級行政単位としては、22省、4直轄市(北京など)、5自治区である(2002年現在)。

[星 斌夫]

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