真猿類(読み)シンエンルイ(英語表記)anthropoids

デジタル大辞泉 「真猿類」の意味・読み・例文・類語

しんえん‐るい〔シンヱン‐〕【真猿類】

哺乳綱霊長目の一群オマキザル上科・オナガザル上科・ヒト上科に分類される。大脳が発達し、社会行動をとる種が多い。→原猿類

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精選版 日本国語大辞典 「真猿類」の意味・読み・例文・類語

しんえん‐るい シンヱン‥【真猿類】

〘名〙 哺乳類、霊長目の一亜目。原猿類に対置される。オマキザル上科新世界ザル)、オナガザル上科旧世界ザル)、類人猿人間を含むヒト上科の三上科に分類され、形態的、生態的、また社会学的に変化に富む。

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改訂新版 世界大百科事典 「真猿類」の意味・わかりやすい解説

真猿類 (しんえんるい)
anthropoids

霊長目真猿亜目Anthropoideaに属する哺乳類の総称。オマキザル上科,オナガザル上科,ヒト上科を含み,原猿類とともに霊長目を二分する。現生の真猿類は中南米ヨザル1種を除いてすべて昼行性で,樹上での集団生活を基本とし,この生活様式を通じて,形態上行動上のいわゆるサルらしさを獲得するに至った。

 形態面では,平づめをもち親指と他の指を向きあわせること(拇指ぼし対向)が完全にできること,眼窩(がんか)は顔の前面に向き,かつ骨性の壁で囲まれ側頭窩とくぎられること,複雑で大型の脳をもつこと,鼻口部が短く嗅覚(きゆうかく)器官が退化していることなどが原猿類との相違点である。ただし,オマキザル上科のマーモセット科は足の親指を除く4指にかぎづめがあり,また嗅覚への依存を示すマーキング行動が見られ原始的な諸特性を残している。歯式は,オマキザル上科のマーモセット科はオマキザル科,オナガザル上科とヒト上科はであり,原猿類に比べ変異は小さい。

 生態や行動面では,よく組織された大型の集団を形成し,社会的な行動や音声伝達が発達していること,多様な環境に分布を広げていること,移動様式にも四足樹上歩行を基本としながら,さまざまに変形されたパターンを見ることができる点などに真猿類の特性を見いだすことができる。また生理的な面では,雌に月経周期や性皮の腫脹(しゆちよう)が見られることや,妊娠期間が長く,1回の産子数が1頭で効率のよい繁殖様式を実現していることなどをあげることができる。

 これらは真猿類の全体についていえる傾向であって,個々の科レベルで見るとそれぞれは固有の特性をもっている。例えばオマキザル科とマーモセット科が原猿類とつながる原始性をもっていることを見のがしてはならない。また,しりだこオナガザル科とオランウータン科の一部だけに認められるし,地上性を獲得した種はオナガザル科に至ってはじめて見られる。

 起源的にみると,真猿類は第三紀の始新世後期ないし漸新世初期にはアジア,アフリカに出現していたと考えられている。当時の化石にはヒト上科(類人猿)的特徴を備えたものと,オナガザル上科的特徴を備えたものとが認められる。しかし確実なオナガザル上科の化石は,今のところ中新世ないし鮮新世以降からしか発見されておらず,両者の起源的関係はまだ確定されていない。一方,オマキザル上科はおそらく漸新世以前から,旧世界の真猿類とは独立に,南アメリカの森林の中で進化の道をたどったと考えられるが,彼らが直接北アメリカの化石原猿類に由来するのか,あるいはアジアないしアフリカに出現した真猿類の祖先と関係があるのかどうかは今後明らかにすべき課題である。現在,多面的な霊長類の類縁関係の研究が進展しつつあり,化石原猿類との関係をも含めて,真猿類という分類カテゴリーに根本的な検討が加えられる可能性がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「真猿類」の意味・わかりやすい解説

真猿類
しんえんるい
anthropoid

哺乳(ほにゅう)綱霊長目真猿亜目に属する動物の総称。霊長目は原猿類Prosimiiと真猿類Anthropoideaの2亜目に分かれるが、後者は霊長目の諸特性をより濃厚にもち、前者よりもあらゆる点で高度な進化段階にあることを示す。オマキザル、オナガザル、ヒトニザル(ヒト)の3上科からなり、さらにマーモセット科Callithricidae、オマキザル科Cebidae、オナガザル科Cercopithecidae、ショウジョウ科Pongidae、ヒト科Hominidaeの5科に分かれる。また、真猿類は、広鼻猿と狭鼻猿からなるということもできる。歯数はオマキザル類が

の36本、それ以外は32本であるが、マーモセット類の歯式が

であるのに対しオナガザル類とヒトニザル類では

である。オマキザル類の1種であるヨザル以外のすべての種は昼行性であり、ショウジョウ科のオランウータン以外のすべての種は両性からなる安定した単位集団をもつ。脳の発達、社会行動や社会構造などの発達は、この系統群に認められる大きな特色である。真猿類のもっとも古い先祖は第三紀始新世後期の化石として知られるが、漸新世にはすでにヒトニザル上科の特性を備えた化石が現れるから、3上科の分岐は古いと考えなければならない。

[伊谷純一郎]


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