真雅(読み)しんが

日本大百科全書(ニッポニカ) 「真雅」の意味・わかりやすい解説

真雅
しんが
(801―879)

平安初期の真言宗の僧。讃岐(さぬき)(香川県)の生まれ。弘法(こうぼう)大師空海の弟で、のちに十大弟子の一人。兄を慕って京都に出、密教を学ぶ。819年(弘仁10)東大寺戒壇院(かいだんいん)で具足戒(ぐそくかい)を受け、825年(天長2)空海より両部灌頂(りょうぶかんじょう)を受け、阿闍梨(あじゃり)となる。835年(承和2)空海の入定(にゅうじょう)ののちには、大和(やまと)(奈良県)弘福寺(ぐふくじ)(川原寺(かわらでら))、東大寺真言院、東寺(とうじ)大経蔵を任される。837年に東寺に入り、847年には東大寺別当となる。862年(貞観4)新しく寺を建立貞観寺(じょうがんじ)と号し、真言宗の拠点の一つとして、彼の活動の中心となった。弟子に真然(しんぜん)(804/812―891)、源仁(げんにん)(818―887。小野流の祖聖宝(しょうぼう)の師)などがいる。著作の一つ『六通貞記(ろくつうじょうき)』は、空海より直接受けたものを記した本としてもっとも重視されており、その直筆とされるものが現存している。

[平井宥慶 2017年8月21日]

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改訂新版 世界大百科事典 「真雅」の意味・わかりやすい解説

真雅 (しんが)
生没年:801-879(延暦20-元慶3)

平安時代初期の真言宗の僧。貞観(じようがん)寺僧正とも呼ばれた。諡号(しごう)は法光大師。空海の弟として讃岐国(香川県)多度郡に生まれ,9歳で上京,16歳で空海に師事,19歳で具足戒を受けた。825年(天長2)弘福(ぐふく)寺(川原寺)別当,847年(承和14)東大寺別当,848年(嘉祥1)権律師,852年(仁寿2)藤原良房と嘉祥(かしよう)寺西院を建立,862年には貞観寺と改め,876年座主を置き僧綱の管督を排した。853年少僧都,856年(斉衡3)大僧都,864年(貞観6)僧正となり,この年奏請して法印大和尚位(僧正),法眼和尚位(僧都),法橋上人位(律師)の制を定め,みずから法印大和尚位に補せられた。嵯峨天皇に声の清徹をめでられ,また護持僧として清和天皇の生誕を祈った話は有名である。860年東寺長者,872年法務を兼ねる。弟子に高野山の真然,醍醐寺の聖宝があり,小野流は真雅から始まるという。
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朝日日本歴史人物事典 「真雅」の解説

真雅

没年:元慶3.1.3(879.1.28)
生年:延暦20(801)
平安前期の真言宗の僧。讃岐国(香川県)多度郡の人。俗姓は佐伯氏。空海の実弟。空海に受学。神護寺定額僧を経て,大和(奈良県)弘福寺別当となる。清和天皇を誕生のときから護持し,藤原良房と結んで嘉祥寺西院を建立し,貞観寺と改称して同天皇の御願寺とした。僧綱職を歴任し,貞観6(864)年には僧綱の僧位を定め,自ら僧正法印大和尚位となり,僧侶で初めて輦車(皇族・摂関・大臣などの乗り物)を許された。同14年に法務に就任。諡は法光大師。<参考文献>小山田和夫「『故僧正法印大和尚位真雅伝記』と『日本三代実録』真雅卒伝について」(『日本歴史』363号)

(岡野浩二)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「真雅」の解説

真雅 しんが

801-879 平安時代前期の僧。
延暦(えんりゃく)20年生まれ。真言宗。兄空海から灌頂(かんじょう)をうける。東大寺真言院をつぎ,のち東大寺別当,東寺長者などをつとめる。清和天皇の信任があつく,藤原良房とともに嘉祥寺西院(貞観(じょうがん)寺)を建立した。僧正,法印大和尚位。元慶(がんぎょう)3年1月3日死去。79歳。讃岐(さぬき)(香川県)出身。俗姓は佐伯。通称は貞観寺僧正。諡号(しごう)は法光大師。著作に「胎蔵頸次第」「六通貞記」など。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「真雅」の意味・わかりやすい解説

真雅
しんが

[生]延暦20(801)
[没]元慶3(879)
平安時代の真言宗の僧。空海の弟。兄の遺命によって,弘福寺,東寺の経蔵を管理し,東大寺の別当,さらに東寺の長者を歴任し,のちに貞観 16 (874) 年に貞観寺を創建した。 79歳で寂。諡は法光大師。主著『胎蔵次第』など。

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