眠・睡(読み)ねむる

精選版 日本国語大辞典 「眠・睡」の意味・読み・例文・類語

ねむ・る【眠・睡】

〘自ラ五(四)〙 (古くは「ねぶる」)
① 心身の活動が低下して、目を閉じて無意識の状態になる。寝る。
※書陵部本海人手子良集(970頃)「たそかれに涙の玉をながめつつねむらで夜はにあかすともし火」
※清原国賢書写本荘子抄(1530)三「死をばねむると心得、生をばさめたと心得んぞ」
② (多く「目をねむる」の形で用いて) つむる。閉じる。
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)四「目を眠(ネムリ)あふむいてしばらくかんがへ」
即興詩人(1901)〈森鴎外訳〉花祭「人々は母上の目を瞑(ネム)らせ、その掌を合せたり」
③ 死ぬ。永眠する。
※雑俳・柳多留‐二九(1800)「目が覚て眠った親を思ひ出し」
活気が衰えたり、活動しなくなったりする。草木の葉が、しぼんだり枯れたりする。
※嚼氷冷語(1899)〈内田魯庵〉「政治的野心が眠(ネム)って了った」
⑤ 利用、活用されない状態にある。
※ある隷属国の悲劇(1955)〈中野好夫〉「ここに一大油田が眠っている」
⑥ 蚕が脱皮の前にしばらく活動をやめて桑を食べない状態になる。
※尋常小学読本(明治三六年)(1903)五「蚕は〈略〉そのあひだに四どねむります」
[補注]類義語としては、上代からネル(ヌ)があり、両者はともに①の意味で使われる。しかし、ネムルにあるまぶたを閉じる意がネルにはなく、ネルにある体を横にする意がネムルには見られないなど、意味にずれがある。「源氏物語」では、寝支度をして床に入ることをネルといい、座ったままの状態などで眠ることをネブルというような使いわけがなされているといわれる。

ねぶ・る【眠・睡】

〘自ラ五(四)〙
※書紀(720)神代上(兼方本訓)「酒を得るに及至(いた)りて頭各一槽(かしらををのをのひとつのさかふねにをとしい)れて飲む。酔ひて睡(ネフル)
※蜻蛉(974頃)中「いらへもせであるに、ねぶるかと思ひし人、いとよくききつけて」
※竹取(9C末‐10C初)「竹取の翁、さばかり語らひつるが、さすがに覚えてねふりをり」
※思出の記(1900‐01)〈徳富蘆花〉二「つい其処一艘の小舟が眠(ネブ)って居る」

ねむり【眠・睡】

〘名〙 (動詞「ねむる(眠)」の連用形名詞化)
① 眠ること。睡眠。ねぶり。〔黒本本節用集(室町)〕
西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉七「ここちよげにねむりに付」
死去死亡のたとえ。永眠(えいみん)
※塔影(1905)〈河井酔茗〉萎める百合「清き匂ひを胸に抱き つひの永眠(ネムリ)の美くしき」
③ 眠気。
※歌舞伎・傾城仏の原(1699)一「ちと昔の話をして、眠を覚さう」
④ 蚕が脱皮前に、しばらくの間活動をやめて、桑を食べないこと。また、その蚕。みん。

ねむた・い【眠・睡】

〘形口〙 ねむた・し 〘形ク〙 =ねむい(眠)
※両足院本山谷抄(1500頃)四「此時、谷は内裡にいて文章かいているほどに、閑でねむたいぞ」
※歌舞伎・霊験曾我籬(1809)七幕「眠(ネム)たい目にも腹を立って仲直りをしろといふに」
ねむた‐が・る
〘自ラ五(四)〙
ねむた‐げ
〘形動〙
ねむた‐さ
〘名〙

ねむ・い【眠・睡】

〘形口〙 ねむ・し 〘形ク〙 ねむりたい気持である。ねむたい。ねぶい。ねぶたい。
※御伽草子・福富長者物語(室町末)「みちみちねむかりしも、これに目さめて」
※人情本・英対暖語(1838)二「アレまだ私は寐むくも何ともござゐませんから」
ねむ‐が・る
〘自ラ五(四)〙
ねむ‐げ
〘形動〙
ねむ‐さ
〘名〙

ねぶた・い【眠・睡】

〘形口〙 ねぶた・し 〘形ク〙 =ねむい(眠)
※多武峰少将物語(10C中)「とまりて独りねしたまふころ、いかにねぶたからず覚すらむと」
ねぶた‐げ
〘形動〙
ねぶた‐さ
〘名〙

ねぶ・い【眠・睡】

〘形口〙 ねぶ・し 〘形ク〙 =ねむい(眠)
※俳諧・雑談集(1692)上「鼠壁いよいよねぶし秋の暮〈普船〉」
ねぶ‐げ
〘形動〙
ねぶ‐さ
〘名〙

ねぶり【眠・睡】

〘名〙 (動詞「ねぶる(眠)」の連用形の名詞化) ねぶること。ねむり。
※蜻蛉(974頃)上「ねぶりもせられず、いそがしからねば」
※坑夫(1908)〈夏目漱石〉「汽車の留った為に、眠(ネブ)りが調子を失って」

ねむた・し【眠・睡】

〘形ク〙 ⇒ねむたい(眠)

ねぶ・し【眠・睡】

〘形ク〙 ⇒ねぶい(眠)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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