石棺(読み)せっかん

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

石棺(せっかん)
せっかん

死者を納めるための石造の容器。数個の石材を組み合わせてつくった組合せ式石と、棺身を一石から刳(く)り抜いてつくる刳抜き式石棺とがある。エジプトやギリシア、ローマをはじめ、世界の各地で古くから石棺が用いられた事例は多い。石製の棺という語意は、遺骸(いがい)を直接入れる容器を意味するが、内部に、さらに木製の棺などを用いて間接の容器となった場合も石棺とよばれることがある。石棺のうちでもっとも原始的な形態のものは、扁平(へんぺい)な自然石を用いて底石を欠くものであり、箱式石棺とよばれる。この種の石棺は、わが国ですでに縄文時代に一部の地域でみられ、弥生(やよい)時代には西日本で類例が増え、古墳時代にはさらに増加する。古墳時代に主要な古墳に用いられた、石材をていねいに加工した石棺は、身(み)・蓋(ふた)とも刳り抜いてつくった割竹(わりだけ)または舟形石棺、組合せの構造の長持(ながもち)形石棺、刳抜き・組合せの両者がある家形石棺に分類される。割竹または舟形石棺は、竹を2分割したような形あるいは刳り舟の形に似ていることから名づけられ、九州、中国、四国、近畿、北陸、関東などの各地に点在し、おもに前半期古墳の棺として使用された。長持形石棺は、底・蓋各一枚、長側二枚の板石で、短側石二枚を挟むように組み合わせ、蓋はかまぼこ形を示すものが多く、近畿地方を中心とした古墳時代中期の大古墳の棺である。家形石棺は、刳抜き・組合せの両者とも身は箱形で屋根形の蓋をかぶせる形につくられ、古墳時代後半期に広く各地の主要古墳で用いられた。蓋が屋根形を呈するものでも、身が箱形でなく長大な形状のものは、舟形石棺の仲間に分類されるのが普通である。
 わが国で箱式石棺以外の石棺は、おもに凝灰岩または砂岩質の軟らかい石材でつくられ、それぞれの地域で産出する石材が利用されるほか、九州の阿蘇(あそ)山系の凝灰岩によるものが中国・四国の瀬戸内沿岸地域や近畿地方へ、あるいは四国の香川県産の凝灰岩によるものが岡山県や近畿地方へ運ばれたような例もある。石材産出地によって石棺の形態に差異がみられるのは、石棺づくり工人の差を表すと思われる。もっとも数多くの石棺をつくりだしたのは、大阪府と奈良県の境の二上山(にじょうさん)石材と兵庫県西部の竜山石(たつやまいし)とよばれる石材であり、前者は古墳時代後半期の家形石棺を、後者は中期の長持形石棺と終末期の家形石棺を製作した。ほかに、石棺式石室の用語があるが、これは、山陰地方の特異な横穴式石室が家形石棺と類似することによる。[間壁忠彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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