破・敗(読み)やぶれる

精選版 日本国語大辞典 「破・敗」の意味・読み・例文・類語

やぶ・れる【破・敗】

〘自ラ下一〙 やぶ・る 〘自ラ下二〙
① 物の形がこわれる。砕ける。破壊される。やれる。
※地蔵十輪経元慶七年点(883)八「皆悉、摧け壊(ヤフレ)て、受用するに任(まか)せ不(ず)なりぬといふがごとし」
平家(13C前)灌頂「甍やぶれては霧不断の香をたき」
② 布や紙などが裂ける。やぶける。ちぎれる。やれる。
※宇津保(970‐999頃)蔵開下「君はあや・かいねりのところどころやぶれたる一かさね、すすけたる白ぎぬきて」
③ 身に傷を負う。きずつく。そこなわれる。害される。
書紀(720)允恭四年九月(図書寮本訓)「実(まこと)を得(え)むものは則全(また)からむ。偽(いつは)らば必ず害(ヤフレ)なむ」
十訓抄(1252)一「やぶれたる虵をみて、薬をつけていやす」
物事がだめになる。機能がそこなわれる。成り立たなくなる。台なしになる。
源氏(1001‐14頃)葵「除目の夜なりけれどかくわりなき御さはりなれば、みな事やぶれたるやう也」
⑤ (敗) 戦いや勝負事に負ける。敗北する。
※書紀(720)雄略二〇年冬(前田本訓)「王城降陥(ヤフレ)て遂に尉礼国を失ふ」
⑥ それまで保たれ維持された状態が失われる。
※一兵卒の銃殺(1917)〈田山花袋〉二〇「その幻影はいつも破れて行った」
⑦ 起きる意の近世上方の大工仲間の語。〔新ぱん普請方おどけ替詞(1818‐30頃か)〕

やぶれ【破・敗】

〘名〙 (動詞「やぶれる(破)」の連用形の名詞化)
① やぶれること。こわれること。引き裂かれること。また、そのものや、その箇所。
今昔(1120頃か)一二「上長押より鼠の走渡るに枕上に物掻き落されたるを見れば、紙の破也」
徒然草(1331頃)一八四「すすけたる明り障子のやぶればかりを、〈略〉張られければ」
② 傷つけられること。そこなわれること。害を受けること。
※東大寺諷誦文平安初期点(830頃)「尊きも卑しきも五龍の残(ヤフレ)未だ脱れず」
③ 物事が成立しないこと。だめになること。破綻破裂。ぶちこわし。
※徒然草(1331頃)八三「万の事、先のつまりたるは、破に近き道なり」
④ (敗) 合戦や勝負事で負けること。敗北。負け。
※御湯殿上日記‐大永七年(1527)六月一七日「二月のやふれより、さかいへ前将軍の ほうちう院 息としてのほらるる」
⑤ 穏やかな状態が破壊されること。乱れること。
※細川勝元記(15C後)「京中の貴賤すはや天下の破れこそ出来れと」
悪者悪漢をいう近世上方の語。〔新撰大阪詞大全(1841)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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