神秀(読み)じんしゅう

精選版 日本国語大辞典 「神秀」の意味・読み・例文・類語

じんしゅう ジンシウ【神秀】

中国、唐代の僧。北宗禅の祖。諡号(しごう)大通禅師河南尉氏の人。博識にして五祖弘忍上座となり、武后・中宗・睿宗に礼遇され「三帝国師」と称された。その教えは華北長安などで広まり、南宋禅に対して北宋禅といわれた。著に「観心論」など。(六〇五頃‐七〇六

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デジタル大辞泉 「神秀」の意味・読み・例文・類語

じんしゅう〔ジンシウ〕【神秀】

[606?~706]中国、唐代の禅僧開封河南省)の人。初め儒学を学び、のち、出家して禅宗第五祖の弘忍に師事慧能えのう南宗禅に対する北宗禅の開祖諡号しごう、大通禅師。

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普及版 字通 「神秀」の読み・字形・画数・意味

【神秀】しんしゆう(しう)

気高く神々しい。晋・孫綽天台山に遊ぶ賦の序〕天台山なるは、(けだ)し山嶽の秀なるなり。りては則ち方(ほうらい)り。陸に登りては則ち四・天台り。皆玄する、靈仙の窟宅するなり。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「神秀」の意味・わかりやすい解説

神秀
じんしゅう
(606―706)

中国、唐代の禅僧。北宗禅(ほくしゅうぜん)の開祖。諡号(しごう)は大通禅師(だいつうぜんじ)。開封尉氏(いし)県(河南省)の生まれ。幼時には儒学を学ぶ。出家ののち、蘄州(きしゅう)東山の弘忍(こうにん)(禅宗第五祖)に師事して法を嗣(つ)いだ。弘忍の没後、荊州(けいしゅう)(湖北省)江陵の当陽山に住して名声をあげた。700年、則天武后に召されて宮中で法要を説き、また中宗や睿宗(えいそう)(在位684~690、710~712)に重用されたので、「三帝の国師」「両京の法主(ほっしゅ)」と称された。宮廷官吏の張説(ちょうえつ)も弟子となり、武后は当陽山に度門寺(どもんじ)を建てて居住させた。その禅法は、離念(りねん)を説き、五方便(ごほうべん)を重んじ、禅宗第六祖慧能(えのう)の頓悟(とんご)(速やかに悟る)南宗禅に対して漸悟(ぜんご)(漸次に悟る)北宗禅といわれた。その門下は華北や江南にまで及び、中唐までは隆盛であった。706年(神竜2)2月28日、洛陽(らくよう)の天宝寺(てんぽうじ)で没した。著作に『観心論』『大乗無生方便門(だいじょうむしょうほうべんもん)』などがある。

[椎名宏雄 2017年2月16日]

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改訂新版 世界大百科事典 「神秀」の意味・わかりやすい解説

神秀 (じんしゅう)
Shén xiù
生没年:605?-706

中国,唐代中期の禅僧。大通禅師。恵秀,僧秀などともよばれた。菩提達磨を初祖とする禅宗の六祖で,事実上の開創者。俗姓は李氏,河南の尉氏の人。禅宗五祖弘忍に参じて,東山法門をうけたのち,はじめは荆州玉泉にあり,則天武后に召されて,洛陽,長安に教えをひろめ,両京法主,三帝国師となる。多くの弟子のうちから,神会(じんね)が独立して頓悟禅を唱え,師と同門の慧能(えのう)を正系の六祖とし,北宗漸教と批判したため,その資料は早く散逸したが,敦煌文書によって,《観心論》《大乗五方便》《無生方便門》などの作が再発見された。

 別に,華厳宗の法蔵の弟子に,ほとんど同時同名の神秀があり,《華厳経疏》30巻,《妙理円成観》2巻の作品で知られる。2人はときに混同されやすい。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「神秀」の意味・わかりやすい解説

神秀
じんしゅう
Shen-xiu

[生]大業1(606)?
[没]神竜2(706).洛陽
中国,隋末,唐初の僧。北宗禅の祖とされる。禅宗五祖弘忍のもとに 50歳で師事する以前に,6年の間,儒仏道三教を学び精通した学者であった。弘忍門下 700人中の上座といわれ,則天武后に招かれ国師として厚遇された。また江陵当陽山に度門寺を建立した。その著『観心論』に,観心の一法こそが仏道の最要であると説き,道信,弘忍の坐禅観心の思想を継承していることがわかる。北宗禅の思想を伝える『大乗五方便』には頓悟的性格が明らかにみられるから,北宗禅が漸悟を主張したとする通説は必ずしもあたらない。

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世界大百科事典(旧版)内の神秀の言及

【衣鉢】より

…日本で,茶道その他の諸芸の奥義を意味するのは,その転化である。インド仏教の戒律で,僧伽梨衣(普段着),鬱多羅僧(上衣),安陀衣(下着)という3種の袈裟(けさ)と,一つの鉢多羅,すなわち鉢盂(はつう)を所持することを認めたのが原義で,中国の禅宗では,五祖の法をつぐ神秀(じんしゆう)と慧能(えのう)がその衣鉢を争ったとされる。【柳田 聖山】。…

【慧能】より

…頓悟は,戒律や禅定によらず,直ちに本来清浄な自性にめざめる,般若の知恵を指す。弘忍の十大弟子のうち,神秀(じんしゆう)その他が則天武后の時代に,長安や洛陽の地に進出,主として上層貴族に迎えられて,華厳や天台などの伝統仏教学と融合し,総合の傾向をとるのに対し,慧能は教外別伝の立場をとり,新しい地方文化の先駆となる。その言行を記す《六祖壇経》は,伝説的な部分が多いけれども,神秀が自己の心境を,〈身は菩提樹,心は明鏡の台,時々に払拭に努めて,塵埃を惹く莫かれ〉と歌い,当時なお一介の行者であった慧能が,〈菩提もとより樹なし,明鏡また台にあらず,本来無一物,何処にか塵埃を惹かん〉と応じたという話は,2人のちがいを明示する。…

※「神秀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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