福建(省)(読み)ふっけん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「福建(省)」の意味・わかりやすい解説

福建(省)
ふっけん / フーチエン

中国南東部、台湾海峡に臨む省。北は浙江(せっこう/チョーチヤン)、西は江西、南は広東(カントン)の各省に接する。唐代に福州と建州(現建甌(けんおう))の各一字をとって福建と称したのが始まりで、清(しん)代に福建省となった。略称は閩。面積12万平方キロメートル、人口3304万6317(2000)。9地区級市、14県級市、46県からなる。省都は福州市。

 地形は山がちで、山地の間に断層活動によって形成された河谷、盆地が並ぶ。標高1000メートル以下の丘陵と山地が全面積の90%を占め、地勢は北西から南東に向かって低くなり、平野の多くは沿海部に集まっている。山脈の多くは北東から南西に連なり、西端の江西省との省境を走る武夷(ぶい)山脈は標高1000~1500メートルである。中央部は北から鷲峰(しゅうほう)山脈、戴雲(たいうん)山脈、博平嶺(はくへいれい)が連なるが、いずれも標高800メートル前後である。これらの山脈から流出する河川は省内最大の閩江のほか、晋(しん)江、九竜(きゅうりゅう)江などがあり、下流には福州平野などの平野が開けている。沿海部は出入りに富む沈降海岸で、厦門(アモイ)島、平潭(へいたん)島、東山島、金門島などの島嶼(とうしょ)が多く、中国有数の漁場として知られている。気候は亜熱帯湿潤気候で、降雨は春から夏に多く、夏と秋に台風が来襲する。年平均気温は15~22℃、年降水量は800~1900ミリメートルである。

 温暖多湿の気候のため多毛作が可能であり、一年三作もしくは二年五作が普及している。中心的な農産物は米であるが、ついでサツマイモ、小麦が多い。商品作物ではサトウキビ、タバコ、アブラナラッカセイがある。山地では茶の栽培が盛んで、崇安(すうあん/チョンアン)の武夷岩(ぶいいわ)茶、安渓(あんけい)の鉄観音(てつかんのん)茶、福州のジャスミン茶、福安の紅茶が有名である。果物では熱帯性のリュウガンレイシ、パイナップル、柑橘(かんきつ)類が多い。山地には鉄、石炭(竜岩(りゅうがん/ロンイエン)など)などの地下資源があり、これを原料とする三明(さんめい/サンミン)の鉄鋼が重工業の中心である。福州、泉州、厦門などの沿岸都市では、福建省出身の海外華僑(かきょう)の援助によって、家電、電子などの新しい工業の発展が著しく、厦門は5経済特区の一つになっている。農村部にも繊維工業が進出している。一方、伝統工芸も保護されており、石彫り、コルク細工、漆器、陶磁器などがある。交通は、鉄道は鷹厦(ようか)鉄道と支線の来福鉄道の2本しかないが、長距離バスが発達している。また空路と海路によって国内各地と香港(ホンコン)に結ばれている。

[青木千枝子・河野通博]

世界遺産の登録

中国には40あまりの世界遺産が存在するが、この福建省では「武夷山(ぶいさん)」(1999年、複合遺産)、「福建の土楼」(2008年、文化遺産)、「中国丹霞(たんか)」(2010年、自然遺産)がユネスコ(国連教育科学文化機関)により世界遺産に登録されている。

[編集部]

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