秩父盆地(読み)ちちぶぼんち

精選版 日本国語大辞典 「秩父盆地」の意味・読み・例文・類語

ちちぶ‐ぼんち【秩父盆地】

埼玉県西部の盆地。荒川とその支流赤平川が貫流する。中心都市は秩父市

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デジタル大辞泉 「秩父盆地」の意味・読み・例文・類語

ちちぶ‐ぼんち【秩父盆地】

埼玉県西部、秩父山地にある盆地。荒川とその支流の赤平川が貫流する。中心地秩父市

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改訂新版 世界大百科事典 「秩父盆地」の意味・わかりやすい解説

秩父盆地 (ちちぶぼんち)

埼玉県西部,秩父地方の中央部にある盆地。一辺が13kmのほぼ正方形をなし,盆地床は第三系中新統よりなる。盆地内を流れる荒川沿いに,高位(標高300~450m),中位(250~300m),低位(160~270m)の三つの段丘が発達する。ローム層をのせる高位,中位の段丘は開析が進んで丘陵状をなし,それぞれ尾田蒔(おだまき)丘陵,羊山丘陵と呼ばれ,そこからの盆地内の眺望はすばらしい。平たん面が広がる低位段丘には桑園や水田が開かれ,集落も発達,秩父地方の産業活動や社会生活の主要舞台となった。中心都市秩父をはじめ小鹿野(おがの),吉田,皆野などの谷口集落が発達し,幕末から明治期にかけて,これらの町のいずれかで毎日のように絹市が開かれた。

 明治以前の秩父盆地から江戸へ通ずるおもな街道としては,矢那瀬の狭隘(きようあい)部を過ぎる熊谷通り(現,国道140号線),粥新田(かゆにた)峠越えの河越通り,正丸峠越えの吾野(あがの)通り(現,国道299号線)があり,特に吾野通りは秩父絹を輸送する重要なシルクロードであった。明治以後これらは県道や国道として拡幅改良され,1982年11月には国道299号線の正丸トンネル(長さ1916m)が開通した。1914年熊谷方面から秩父まで延長された秩父鉄道は秩父地方唯一の鉄道の大動脈として,セメントと織物の二大産業発展の原動力となり,奥秩父登山への利用者もふえた。1969年には秩父地方の住民の長年の望みであった西武秩父線が開通して,飯能所沢,池袋方面への通勤が便利になった。また都内からのハイキング客が激増し,芦ヶ久保果樹公園村や秩父霊園などが開かれ,ブドウ,クリなどの観光農園もふえ,近郊の日帰りレクリエーション地として大きく変貌している。

 織物生産は秩父の代表的な地場産業として知られ,大正時代には若山牧水が〈秩父町出はずれ来れば機織の唄ごえつづく古りし家並に〉と詠んだほど盛んであったが,今は昔の面影はない。セメント工業は1923年の秩父セメント(現,太平洋セメント)の操業以来,戦中・戦後を通じて時代とともに技術革新を達成しながら発展し,80年には製造品出荷額は432億円で秩父最大の産業となった。しかし,原石採掘が進んで霊峰武甲山山容が変わり,植生も破壊されたので,自然保護対策が進められている。近年は電気機器工業がのびて秩父市全体の出荷額の45%(1995)を占め,セメント工業は226億円で16%に止まっている。

 清流景勝札所秩父三十四所)と七湯および秩父夜祭は秩父盆地の観光の中心で,これらに引かれて訪れる人も多い。特に浦山渓谷は小・中学生の夏のキャンプ場としてにぎわい,浦山川と荒川の合流点付近から下流の荒川の蛇行はみごとで,巴川の称がある。戦国時代に開かれた秩父三十四所は今でも訪れる巡礼が多く,1番妙音寺の観音堂と4番金昌寺の石仏群は県の文化財となっている。かつて札所巡りや三峰神社の参詣者の湯治場として親しまれた秩父七湯の面影は,今でも盆地南端の白久(しろく),日野などの鉱泉宿に残っている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「秩父盆地」の意味・わかりやすい解説

秩父盆地
ちちぶぼんち

埼玉県西部,秩父山地の中央部にあるほぼ四角形の構造盆地。盆地床は新第三紀層からなり,武甲山など 1000m級の周囲の秩父山地ときわだった対照を示す。盆地内には荒川赤平川などが流れ,盆地床を浸食している。このため盆地床の高度は一様でなく,浸食を免れて残存する丘陵地,荒川,赤平川の河岸段丘面や沖積低地の地形に分けられる。段丘面は上下 2段で,特に下段の段丘が広く連続している。中心地の秩父市をはじめ,荒川沿いに長瀞町,皆野町,赤平川沿いに小鹿野町がある。農林業が中心で,特にコンニャクやシイタケの栽培,製材,セメントなどの生産が行なわれる。秩父鉄道,国道140号線,299号線が通じる。武甲県立自然公園長瀞玉淀県立自然公園に含まれる。

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百科事典マイペディア 「秩父盆地」の意味・わかりやすい解説

秩父盆地【ちちぶぼんち】

埼玉県西部,関東山地にある盆地。面積約100km2。第三紀層からなり,周辺山地とはおもに断層で限られる。荒川,赤平川などが貫流し3段の段丘が発達。米作,果樹,養蚕が盛んで,中心に秩父市街がある。
→関連項目雁坂峠埼玉[県]秩父山地皆野[町]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「秩父盆地」の意味・わかりやすい解説

秩父盆地
ちちぶぼんち

埼玉県西部、秩父山地にある、ほぼ方形の構造盆地。周辺の山地が秩父中・古生層や長瀞(ながとろ)系結晶片岩であるのに対し、第三紀層からなる丘陵と、荒川およびその支流の赤平(あかびら)川の河岸段丘からなる。中心都市秩父市の市街地はこの段丘上にあり、国造(くにのみやつこ)の知知夫彦命(ちちぶひこのみこと)を祀(まつ)った秩父神社を中心に発達した。また、小鹿野町(おがのまち)、皆野町(みなのまち)などの市街地や、水田、畑地も河岸段丘上にある。産業としては、養蚕を背景に秩父銘仙(めいせん)を主とした絹織物業が中心であったが、今日では電子、セメント工業が行われている。米作、酪農、野菜栽培なども盛んである。

[中山正民]

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世界大百科事典(旧版)内の秩父盆地の言及

【秩父山地】より

…山地西部は奥秩父と呼ばれ,金峰(きんぷ)山(2595m),国師ヶ岳(2592m),甲武信ヶ岳(こぶしがたけ)(2475m),雲取(くもとり)山(2018m),大菩薩嶺(だいぼさつれい)(2057m)など標高2000mを超える高峰二十数座を含み,日本アルプス以外の日本の山地としては有数の高度をもつが,火山は一つもない。山地の北東寄りには断層盆地の秩父盆地があり,その東部から北部にかけての周縁部は標高1000m以下の低山性山地で,外秩父山地と呼ばれる。 秩父山地の特色は深い谷と急峻な山地斜面をおおう森林にある。…

※「秩父盆地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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