空貝・虚貝(読み)うつせがい

精選版 日本国語大辞典 「空貝・虚貝」の意味・読み・例文・類語

うつせ‐がい ‥がひ【空貝・虚貝】

〘名〙
海辺などにある、肉がぬけて、からになった貝。貝がら。古くは特に海辺にある巻き貝の殻をいう。うつせ。
※栄花(1028‐92頃)ゆふしで「御覧ぜし伊勢の千尋の底のうつせがひ恋しくのみおぼされて、しほたれわたらせ給ふに」
和歌序詞枕詞のように用いる。
(イ) (①の意から) 「実なし」「むなし」などを言い起こす。
万葉(8C後)一一・二七九七「住吉(すみのえ)の浜に寄るといふ打背貝(うつせがひ)実なき言もちあれ恋ひめやも」
※大和(947‐957頃)八五「よしおもへあまのひろはぬうつせがひむなしき名をば立つべしや君」
(ロ) (離れ離れになった二枚貝の殻の意から) 「あわず」「われる」などを言い起こす。
※堀河百首(1105‐06頃)恋「思ふ事ありその海のうつせがひあはでやみぬる名をや残さん〈源師頼〉」
※新後拾遺(1383‐84)恋四・一一八七「思ひいづやあら磯波のうつせ貝われても逢し昔かたりは〈藤原家良〉」
(ハ) 同音反復で「うつし心」「うつつ」などを言い起こす。
千載(1187)雑下・一一六〇「住の江の しほにただよふ うつせがひ うつし心も うせはてて〈源俊頼〉」
③ 貝「つめたがい(螺)」の異名
④ 貝「うずらがい(鶉貝)」の異名。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android