日本大百科全書(ニッポニカ) 「立山(町)」の意味・わかりやすい解説
立山(町)
たてやま
富山県南東部、中新川郡(なかにいかわ)の町。1954年(昭和29)雄山(おやま)町と上段(うわだん)、東谷、釜ヶ淵(かまがふち)、立山、利田(りた)の5村が合併して成立。同年新川村を編入。立山連峰の西麓(せいろく)、常願寺川(じょうがんじがわ)右岸を占める。中心地区の五百石(ごひゃっこく)は江戸時代には松本開(びらき)といい、高野原の開拓が進むにつれ市場町として発達した。北陸自動車道の立山インターチェンジがあり、製紙、金属、機業などの工場が立地する。芦峅寺(あしくらじ)、岩峅寺(いわくらじ)集落は中世から立山信仰を背景に発展し、とくに芦峅寺は江戸時代には33坊5社人の宿坊があり、立山登拝を全国に勧進、登山者を集めて栄えた。現在も山小屋経営者が多い。雄山神社は立山頂上に峰の本社、芦峅寺に中宮、岩峅寺に前立社壇(本殿は国の重要文化財)が置かれる。芦峅寺の立山風土記(ふどき)の丘には立山信仰用具(国の重要有形民俗文化財)を保管する富山県立山博物館や豪農の嶋(しま)家住宅(国の重要文化財)などが配置される。千寿ヶ原(せんじゅがはら)(立山駅)は富山地方鉄道立山線の終点にあたり、ここから長野県大町市へ至る立山黒部アルペンルートの主要部分を占める。町域南東部は中部山岳国立公園域で、立山連峰のほか、黒部峡谷の下廊下(しものろうか)、黒部ダム、地獄谷温泉、称名滝(しょうみょうだき)などを町域に含む。立山の山崎圏谷(やまさきけんこく)は国指定の天然記念物。面積307.29平方キロメートル(一部境界未定)、人口2万4792(2020)。
[深井三郎]
『『立山町史』全3巻(1977~1984・立山町)』▽『高瀬重雄著『立山信仰の歴史と文化』(1981・名著出版)』