立物・立者(読み)たてもの

精選版 日本国語大辞典 「立物・立者」の意味・読み・例文・類語

たて‐もの【立物・立者】

〘名〙
① 「はにわ(埴輪)」の異称。〔書紀(720)垂仁三二年七月(北野本訓)〕
② 軍陣の標識として兜(かぶと)の頂上や前後・左右につける装飾。前立(まえだて)、後立(うしろだて)、脇立(わきだて)、頭立(かしらだて)などがある。〔文明本節用集(室町中)〕
能楽で、龍・虎の精霊の役などが用いる輪冠。また、天女・女神などの役がつける天冠のいただきに立てる鳥・獣・花などの造り物。
④ 弓の的の異称。
※今川大双紙(15C前)弓法之次第之事「何もをも中物を射ると談るべし。四半共九半共立物共可談也」
⑤ 実質のない飾りもの。装飾。かざり。
浮世草子本朝二十不孝(1686)五「あたら花娌をたて物にして淋しがらせ我独りねまの戸の明暮」
⑥ 芝居の一座の中で、中心となる役者。幹部俳優。立役者。立役(たてやく)
※俳諧・西鶴大矢数(1681)第一七「立物と人はいふ也舞台先〈執筆〉 贔負があってあんな男を」
⑦ 仲間の中で、中心となる重要な人物やすぐれた人物。また、人気者。あたまかぶ。
※浮世草子・元祿大平記(1702)一「西鶴は難波の立(タテ)物にして、ぬれ文の類はひとり大坂のみすぐれたるやうにおもはるるは」
⑧ 重要なもの。主要なもの。
仮名草子浮世物語(1665頃)一「博奕打溢者に付き合ひて、揉賽・重・迦烏のたてもの、銭の中に銀を混へ、銀の下に金を敷きつつ」
几帳(きちょう)衝立(ついたて)など、部屋の中で立てて置く物。
鎌倉殿中以下年中行事(1454か)御所造并御新造之御移徒の様躰之事「御遠侍は大間七間にて、立物・御畳などは無之」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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