筋トーヌスのみかた

内科学 第10版 「筋トーヌスのみかた」の解説

筋トーヌスのみかた(神経疾患患者のみかた)

(6)筋トーヌスのみかた
 筋トーヌス(muscle tonus)は筋の緊張状態を指し,筋を受動的に伸長したときの抵抗として表現される.その異常には亢進と低下があり,さらに亢進は痙縮と固縮(現在は筋強剛という用語が推奨される),低下は受動性と伸展性の亢進に分けられる.
 痙縮(spasticity)は錐体路障害で認められ,筋伸長の速度を速めるとともに抵抗が増し,ある時点で急に抵抗が減少する折りたたみナイフ現象がみられるのが特徴である.ただし,脊髄損傷による脊髄ショックや一次運動野に限局した病変では,筋トーヌスは低下する.筋強剛(rigidity)は錐体外路障害で認められ,筋伸長の速度によらず,ほぼ一定の抵抗が認められる.一様な抵抗は鉛管様,がくがくと断続的な抵抗は歯車様と表現する. 筋緊張の低下は下位運動ニューロン障害や筋障害のときに認められる.小脳障害では筋の伸長に対する抵抗がほとんど感じられず,受動性が亢進する場合がある.また錐体路障害では関節の過伸展(伸展性の亢進)がみられる場合がある.
 筋トーヌスを調べる場合に,被験者の筋緊張がなかなか抜けないことがあるので,これを筋強剛と見誤らないことが肝要である.これはゲーゲンハルテン(Gegenhalten:抵抗症)といわれる現象で,筋緊張は変動し,被験者の注意をそらせると正常の抵抗が観察できる.しかし,ゲーゲンハルテンに把握反射などの徴候を伴う場合には,前頭葉障害が示唆される.[西澤正豊]
■文献
水澤英洋,宇川義一編著:神経診察:実際とその意義,中外医学社,東京,2011.水野義邦編:神経内科ハンドブック 鑑別診断と治療 第4版,医学書院,東京,2010.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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