節(せつ 言語学)(読み)せつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「節(せつ 言語学)」の意味・わかりやすい解説

節(せつ 言語学)
せつ

統語上の単位で、句より上位のもの。伝統的分類では、節は句と異なり、文の資格を備えた統語体を含むものとされる。

 文がその一部として節を含み、かつその節が文の他の部分に依存してしか存在できないとき、その節は「従属節」とよばれる。従属節を含むもとの文自体も節の定義にあうので、対比して「主節」とよばれることがあるが、これは結局「文」と同じことなので、従属節だけを単に「節」とよび、主節という名称を使わない場合もある。たとえば、「〔(彼がきて)会が盛り上がった〕」「〔私は(彼がきたの)を知らなかった〕」において、( )内が従属節であり、〔 〕内はそれを含む主節、すなわち文である。英語の‘(He came) (and she left).’の二つの部分は、互いに他に依存することなく自立できるから、対等であり、「等位節」とよばれることがあるが、この文は事実上二つの文の連結とみなせるので、等位節を認めない立場もある(日本語では、統語の構造上、等位節は存在しない)。

 節には統語機能に基づいた分類もある。上例の「(彼がきて)」は副詞節、「(彼がきたの)」は名詞節である。また、「(いまにも雨が降りそうな)ようす」は形容詞節、「(彼が乗ってきた)列車」は関係節である。

 以上の節と句は、英文法でいうclauseとphraseにほぼ対応する(英文法では、clauseを「主語述語をもつ統語体」とし、phraseをそれ以外のものとする)。ただし、英語のように文に主語を明示しなければならない言語での節の定義は、他の性質の異なる言語(たとえば日本語)にはそのままでは適用できない。なお、国文法では、節と句を以上とは逆の意味で使うことがあるので注意を要する。

山田 進]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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