累進処遇(読み)るいしんしょぐう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「累進処遇」の意味・わかりやすい解説

累進処遇
るいしんしょぐう

自由刑の執行につき、あらかじめ階級的に段階を定めておき、受刑者の行刑成績が向上すれば、順次その処遇を上級の段階に進め、上級になるにしたがって自由制約の度合いを緩めていく一方、自律的責任を加重していく方法。累進制度(progressive stage system)は、1822年イギリスの流刑地オーストラリアで案出され、のちに仮釈放の制度と結合して、19世紀末から20世紀初頭にかけて、受刑者の理想的な処遇方法として発展した。日本では、1933年(昭和8)制定行刑累進処遇令によって6か月以上の懲役受刑者を対象とする四階級の細緻(さいち)な制度が規定され、これに基づいて長らく運用されていた。しかし、2005年(平成17)・2006年の監獄法(明治41年法律第28号)全面改正に伴い累進処遇制度も分類処遇制度とともに廃止され、かわりに現在では刑事収容施設法(平成17年法律第50号)によって、受刑者の生活や行動の制限を順次緩やかなものとする制限の緩和(88条)と、手紙の発信通数、テレビの視聴などの優遇措置(89条)の制度が取り入れられている。

[須々木主一・小西暁和 2015年11月17日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「累進処遇」の意味・わかりやすい解説

累進処遇
るいしんしょぐう

受刑者の処遇内容を数段階に分け,受刑者の成績,発奮努力の程度に応じて,順次上位に引き上げて処遇を緩和し,更生意欲を高めるとともに,しだいに社会適応をはかる制度。日本では,1933年の行刑累進処遇令によって採用された。

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世界大百科事典(旧版)内の累進処遇の言及

【行刑】より

…懲らしめによる威嚇と,規律による行動の外的統制の理念がそれを支えた。 19世紀後半には,アメリカの保護観察を伴った宣告猶予であるプロベーションprobationとそれに学んだヨーロッパ大陸の執行猶予制度が,受刑者を改善するよりも悪風に感染させるだけであると非難されていた短期自由刑の弊害を避けるために発展し,またオーストラリアなどの流刑地で行われた累進処遇制・仮釈放制や,保護観察を伴った仮釈放であるパロールparole,あるいは早期釈放を監獄内規律維持に使う善時good time制が拘禁自体の回避策として発展した。以上の実刑回避にとどまらず積極的に犯人改善を目ざしての処遇体制も,70年のシンシナティ宣言のころから明確になり始める。…

※「累進処遇」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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