絡・搦（読み）からむ

精選版 日本国語大辞典

から・む【絡・搦】

[1] 〘自マ五（四）〙

① 細長いものなどが、まわりに巻きつく。からまる。

※太平記（１４Ｃ後）二六「内甲(うちかぶと)にからみたる鬢の髪を押のけ」

※和英語林集成（初版）（1867）「ヘビガ キニ karan(カラン)デ ノボル」

② 言いがかりをつけてつきまとう。むり難題をしつこく言って困らせる。からまる。

※洒落本・駅舎三友（1779頃）出立「戒名(けへみゃう)を十七八ほっていやアがるから、おれがからみぬひてやったら」

※浮雲（1887‐89）〈二葉亭四迷〉一「お勢は例の事を種にして乙うからんだ水向け文句」

③ 事態がわかりにくく入り組む。こんがらかる。からまる。

※歌舞伎・𢅻雑石尊贐（1823）中幕「イヤア、最前より詞(ことば)の端々、味に搦(カラ)みしこの場の様子」

④ (①の比喩的用法) 感情や欲望、事柄などがつきまとってくる。密接に関連する。「情がからむ」

※落語・錦の犢鼻褌（1897）〈四代目橘家円蔵〉「何かお祭にからんだ事を申上げます」

⑤ 登山で、山の中腹を回って進む。〔山岳語彙（1942）〕

[2] 〘他マ五（四）〙 細長いものなどを、まわりに巻きつける。からめる。

※大鏡（１２Ｃ前）四「この御ばくやうは、うちたたせ給ぬれば、ふたところながら、はだかに腰からませ給て、夜中、暁まであそばす」

※申楽談儀（1430）能の色どり「上を帯にてからみしを見て」

※俳諧・更科紀行（1688‐89）「をのをの肩にかけたるもの共、かの僧のおひねものとひとつにからみて馬に付て」

[3] 〘他マ下二〙 ⇒からめる（絡）

[補注]何かが離れずに巻きつくというのが原義。

からみ【絡・搦】

〘名〙 (動詞「からむ（絡）」の連用形の名詞化)

① 巻きつくこと。

※浄瑠璃・唐船噺今国性爺（1722）下「千筋の引づなからみのくさり」

② 相撲のからみ投げ。また、男女の房中での色事。

※人情本・春色辰巳園（1833‐35）初「色の土俵のせきと関、四十八手はまだなこと。新手をもってお客をば、投もからみもするなれど」

③ 無理を言ったり、言いがかりをつけたりして困らせること。

※洒落本・大通禅師法語（1779）「我大通の道は〈略〉悪振(いやみ)邪工(カラミ)の無理(こじつけ)を止め我心を察して他(ひと)の心を察するの義」

④ 入り組んだ事情。めんどうな事柄。

※洒落本・美地の蠣殻（1779）「なるほど先の面(つら)が悪ひと、からみがなくて遊びよふ御ざりやす」

⑤ 歌舞伎、舞踊劇などで、主役を引きたてる役、または演出法。軍兵、捕り手、花四天(はなよてん)などがある。とりまき。とったり。

⑥ 相場がある一定の値段の前後にあること。→絡(がらみ)②。〔模範新語通語大辞典（1919）〕

から・める【絡・搦】

〘他マ下一〙 から・む 〘他マ下二〙

① つかまえてしばる。捕縛する。また、つかまえて監禁する。

※書紀（720）皇極二年一一月（岩崎本訓）「速かに山に向て彼の王(みこ)を求捉(カラム)可し」

※平家（１３Ｃ前）五「悪党二人、にげ籠て候ひしを、寄ってからめうど申す物も候はざりしに」

② なわ、ひもなど、細長いものを巻きつける。からませる。

※金刀比羅本平治（1220頃か）中「甲に熊手をきりつけながら、〈略〉六波羅までからめて落ちられければ」

※多情多恨（1896）〈尾崎紅葉〉後「夜衣を絡付(まとひつ)けたり、足を縈(カラ)めたり」

③ 料理で、粉状のものや粘り気のあるものを全体によくつける。「団子にタレをからめる」

④ (①の比喩的用法で、多く受身の形で用いる) 心を奪う。気持や感情をとらえる。

※こんてむつすむん地（1610）一「ちからをよぶほど人のさはがしき事をのぞくべし。〈略〉其ゆへはみもなき事にはやくけがされ、又はからめらるる者也」

⑤ ある物事に、他の物事を関係づける。からませる。

⑥ 登山で、障害物や通りにくい所をさけて回り道をする。

がらみ【絡・搦】

〘接尾〙

① 名詞に付けて、そのものをくるめて、そのものといっしょに、の意を表わす。ぐるみ。

※甲陽軍鑑（１７Ｃ初）品一〇「刀を取て、さやがらみうたんとす」

② 年齢、値段を示す数詞に付けて、だいたいその見当、その前後、の意を表わす。値段の場合は多く相場で用いる。「五十がらみの人」

※模範新語通語大辞典（1919）〈上田景二〉「カラミ 搦み。〈略〉二円搦(ガラ)みと云へば二円内外のこと」

出典　精選版 日本国語大辞典