美・麗(読み)うるわしい

精選版 日本国語大辞典 「美・麗」の意味・読み・例文・類語

うるわし・い うるはしい【美・麗】

〘形口〙 うるはし 〘形シク〙
[一] 整った感じ。きちんとしていて美しいさまにいう。
① 風光や宮殿などの整ったさまをたたえていう。壮麗だ。立派で美しい。
古事記(712)中・歌謡「大和(やまと)は 国の真秀(まほ)ろば 畳(たた)なづく 青垣 山籠れる 大和し宇留波斯(ウルハシ)
② 人の美しく立派なのをほめていう。立派だ。すぐれて美しい。輝くばかり美しい。
※古事記(712)下・歌謡「宇流波斯(ウルハシ)と さ寝しさ寝てば 刈薦(かりこも)の 乱れば乱れ さ寝しさ寝てば」 〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
③ 外面的にきちんとしている美しさをいう。端麗だ。整っていてきれいだ。
※霊異記(810‐824)中「(てづくり)の姝(ウルワシ)きこと比(たぐひ)无し〈国会図書館本訓釈 妹 于留和之〉」
源氏(1001‐14頃)若紫「ただ絵に書きたる、ものの姫君のやうにしすゑられて〈略〉うるはしうてものし給へば」
④ 乱れたところがなく、完全に整ったさまをいう。
(イ) 完全で理想的だ。端正だ。
※源氏(1001‐14頃)蛍「仏のいとうるはしき心にて説きおき給へる御法にも」
(ロ) ちゃんとしている。きちんとしている。
※霊異記(810‐824)中「字を連ね居(す)ゑては花(ウルワシ)からず〈国会図書館本訓釈 花 ウルワシク〉」
(ハ) 態度、服装、心情などが、きちんとしていて立派だ。作法にかなっている。きちょうめんだ。
※源氏(1001‐14頃)玉鬘「うるはしうものし給ふ人にて、あるべき事はたがへ給はず」
※大鏡(12C前)二「凡何事にも有識に、御こころうるはしくおはしますことは」
⑤ 人と人との間柄がきちんとしている。仲がいい。
書紀(720)神代下(水戸本訓)「天稚彦〈略〉味耜高彦根神と友善(ウルハシ)
※葉花星宿(1972)〈松本清張〉五「あくまでもうるわしい師弟の義理人情を描いている」
⑥ 本格的であるさまをいう。正式だ。公的だ。
※栄花(1028‐92頃)音楽「昨日はうるはしき御よそひなりしに、今日は殿ばら、君達皆直衣にて参り給へり」
⑦ 正しくまちがいのないさま。本当だ。
平家(13C前)一二「故左馬頭義朝のうるはしきかうべとて」
[二] 柔かな美しさ、ときに魅力的な新鮮さを含む美しいさまにいう。
容貌容姿などについて、新鮮な美しさ、うるおいのある美しさをいう。
四河入海(17C前)六「眼の麗して霞の如なるに」
② (きげんや顔つきなどが)はればれとしている。
日葡辞書(1603‐04)「Vruuaxij(ウルワシイ) cauo(カヲ)
滑稽本・古朽木(1780)五「御機嫌益うるはしく」
③ 心情や人と人との間柄がしっとりとしていて美しい。心があたたまるような感じである。
※火の柱(1904)〈木下尚江〉一八「諸君は之を称讚して麗はしき社会的救済事業と認めて来たでは無いか」
[語誌](1)「うつくし」が愛すべきものをいうのに対し、これは整った美しさをいう。上代には、立派なものとして賞揚する場合に多く用いられ、中古に至ると外見的な立派さ、しかつめらしい、儀式ばった感じに用いられた。
(2)(二)①の魅力的なあでやかさを含む美しさを表わすようになったのは、中世末期ごろからか。現在では「うるわしい友情」のように「心」に関して用いられることが多い。
うるわし‐げ
〘形動〙
うるわし‐さ
〘名〙

うるわうるはし【美・麗】

〘形シク〙 ⇒うるわしい(美)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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