耶馬渓(渓谷)(読み)やばけい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「耶馬渓(渓谷)」の意味・わかりやすい解説

耶馬渓(渓谷)
やばけい

大分県北西部の耶馬渓溶岩台地を山国川(やまくにがわ)、駅館川(やっかんがわ)などが刻んでつくった渓谷。岩石美、森林美、渓流美がよく調和した点に特色がある。頼山陽(らいさんよう)の筆によって世に出た、山国川本流の本(ほん)耶馬渓や跡田(あとだ)川の羅漢寺(らかんじ)渓などは、集塊岩を基調とした旧耶馬渓式風景で、直立した節理と、もろくて不均質な層理に沿って侵食がなされたために、奇岩秀峰に富む。羅漢寺と、菊池寛の『恩讐(おんしゅう)の彼方(かなた)に』で知られる青ノ洞門(あおのどうもん)の一帯が有名である。山国川支流、山移(やまうつり)川の谷の深(しん)耶馬渓や、金吉(かなよし)川の谷の裏(うら)耶馬渓などは、集塊岩より硬く均質な構造を有する新耶馬溶岩のつくった新耶馬渓式風景で、洞窟(どうくつ)・洞門は生じにくいが、節理に沿って風化・侵食が行われ、直立の岩壁や石柱林立をみせる。台地端には東椎屋ノ滝(ひがししやのたき)、福貴野ノ滝(ふきののたき)、竜門ノ滝(りゅうもんのたき)などの瀑布(ばくふ)景観もある。植物景観も優れ、標高800メートルくらいまで暖帯林、その上が針葉樹を交えた広葉樹温帯林で、諸所ツクシシャクナゲを下木とするブナ純林を含むが、奥耶馬渓一帯がそれである。新緑と紅葉期に観光客が多い。別府(べっぷ)北浜、中津駅、豊後森(ぶんごもり)駅から定期観光バスが出る。

[兼子俊一]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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