家庭医学館 「胃アトニー/胃下垂」の解説
いあとにーいかすい【胃アトニー/胃下垂 Gastric Atony / Gastroptosis】
胃壁(いへき)の筋肉の緊張が低下または消失している状態を胃アトニーといい、ほとんどの場合、胃の下端の位置が下がる胃下垂(いかすい)をともなっています。
一般にからだつきの細い、腹筋の乏しい無力性体質の人に多くみられます。また、胃下垂の人は、同時に腸や腎臓(じんぞう)などの他の臓器の下垂(内臓下垂(ないぞうかすい))をともなっていることが多いものです。
胃の動き(蠕動運動(ぜんどううんどう))が低下しているため、口・食道から入った食物を攪拌(かくはん)したり、十二指腸へ送り込む力が弱くなっています。そのため、上腹部の膨満感(ぼうまんかん)・重圧感、食欲不振などをおこします。
[検査と診断]
診断には、上部消化管X線検査、いわゆる胃のX線検査が有効です。胃角部(いかくぶ)(上縁)が骨盤内に入っていれば、胃下垂と診断されます(図「胃下垂」)。
蠕動運動の低下は、バリウムが胃内で停滞し、十二指腸への排出が遅れることから判断されます。
[治療]
胃アトニー、胃下垂は、基本的に、苦痛と感じる症状がなければ、治療の必要はありません。
胃の蠕動運動は、腹筋運動や全身運動によっても高まりますので、持続的な運動が必要です。また、下垂した胃は、体重の増加や腹筋・背筋の鍛練・増量によって挙上できます。
食後、腹部の膨満感や重圧感の著しい人は、食事の1回の量を減らし、回数を増やすことや、胃の内容物を早く十二指腸へ送るため、食後30分間くらい右側臥位(みぎそくがい)(右を下にして横になる)をとる工夫も必要です。さらに、消化管運動機能亢進薬(しょうかかんうんどうきのうこうしんやく)が有効なこともあります。