背・脊(読み)せ

精選版 日本国語大辞典 「背・脊」の意味・読み・例文・類語

せ【背・脊】

〘名〙
① 動物の胸腹部の反対側で、首から尻(しり)までの部分。そびら。せなか。せな。
書紀(720)欽明七年七月(内閣文庫本室町時代訓)「乃ち良駒を見えつ。〈略〉影を睨(み)て高く鳴ゆ。軽く母(おも)の背(セ)を超ゆ」
※宇治拾遺(1221頃)二「此衆は、目をかけて、せをたはめて」
② 一般に、物のうしろ側の部分。うら。かげの方。→背を向ける
※書紀(720)大化三年一二月(寛文版訓)「其の冠の背(セ)には漆羅(うるしのうすもの)を張りて」
③ 一般に物の、背中のように上になっている所。
※断橋(1911)〈岩野泡鳴〉一一「これを越えれば、もう直ぐだらうといふのを力にして、やッとのことで山の背まで達し」
※珊瑚集(1913)〈永井荷風訳〉年の行く夜「丈(セ)の高いランプが」
書物のとじこんである側の外側の部分。表紙でくるんで、書名、作者名などが記入される。背表紙。
婦系図(1907)〈泉鏡花〉前「書物の、背のクロオスの文字が〈略〉きらきら異彩を放つのを」
⑥ (「…を背に」の形で) 自分のうしろに位置させること。背後に置くこと。→背にする
青春(1905‐06)〈小栗風葉〉秋「一頻りパッと染めた夕栄雲の薄れ行く西明を脊(セ)に、東の方太平洋の蒼然たる暮色を望んで」
[語誌]本来「せ」は外側、後方を意味する「そ」の転じたもので、身長とは結びつかなかった。ところが身体つき・体格を意味する「勢(せい)」が存在するところから、音韻上の近似によって、「せ(背)」と「せい(勢)」とが混同するようになったと思われる。

せい【背・脊】

〘名〙 (「せい(勢)」と同源か) からだの大きさ。体格。特に、頭頂から足先までの高さ。みのたけ。せたけ。身長。せ。比喩的に、広く山、建物、植物、書物など、物の高さもいう。
愚管抄(1220)五「信西が妻成範が母の紀の二位は、せいちいさき女房にてありけるが」
※虎明本狂言・右流左止(室町末‐近世初)「かんせうじゃうよにこえ、せいひきく御ざ有たるにより」
[補注]「せ」の長音化とすれば「せえ」と表記すべきとも考えられるが、古くから「せい」と表記されており、「せい(勢)③」から生じた用法か。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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