家庭医学館 の解説
せきついぶんりしょうせきついすべりしょう【脊椎分離症/脊椎すべり症 Spondylolysis / Spondylolisthesis】
椎間関節(ついかんかんせつ)を構成している上関節突起(じょうかんせつとっき)と下関節突起(かかんせつとっき)の間の骨が欠けてしまって、脊椎(せきつい)の前方部分と後方部分が分かれている状態を、脊椎分離症といいます。
また、上下の脊椎がずれている状態を、脊椎すべり症といい、そのずれ方は、下の脊椎に対して、上の脊椎が前方(胸、腹側)にずれているのがふつうです。
脊椎すべり症には、脊椎分離症をともなう脊椎分離すべり症と、脊椎分離症をともなわない仮性(かせい)すべり症とがあります。
脊椎分離症、すべり症とも、先天的におこるものと後天的におこるものとがあります。後天的なものは、成長期におけるスポーツなどによる疲労骨折が原因ではないかと考えられています。
[症状]
分離しているだけなら、なんの症状もないことが多いのですが、分離しているために脊椎間が不安定になり、椎間板(ついかんばん)や椎間関節に過大な負担がかかるために、しだいに慢性的な腰痛(ようつう)がおこってきます。
初めは、朝起きたときや動き始めに腰全体に重苦しい感じや鈍痛をおぼえますが、動いているうちに楽になります。しかし、激しい運動や仕事でからだを酷使すると、悪化します。
とくに、下肢(かし)(脚(あし))に放散する痛みやしびれが出てきたら、椎間板ヘルニア(「椎間板ヘルニア」)を合併しているおそれがあります。
脊椎すべり症がひどくなると、椎間孔(ついかんこう)がゆがんで、そこを通る神経が圧迫されるために、下肢に放散する痛みが現われます。また、脊柱管(せきちゅうかん)にも変形がおこって、中の脊髄(せきずい)を圧迫し、腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)(「腰部脊柱管狭窄症」)の症状がおこることもあります。
[検査と診断]
脊椎分離症はからだの斜位からの、脊椎すべり症は側面からのX線検査で診断できます。しかし、脊椎分離症や脊椎すべり症があっても、症状がおこるとはかぎらないので、他の要因が存在しないかどうかの検査も必要です。
[治療]
腰痛が強いときには、腰痛一般の治療(腰痛(症)の「治療」)に準じて安静にし、コルセットをつけたり消炎鎮痛薬が処方されたりしますが、慢性化して痛みが軽くなったら、むしろ積極的に腰痛体操(ようつうたいそう)(図「腰痛体操(1)」、図「腰痛体操(2)」、図「腰痛体操(3)」、図「腰痛体操(4)」)を行なうようにします。
どうしても強い痛みがとれず、日常生活や仕事に支障をきたす場合は、手術を行ないますが、手術には多くの方法があり、手術後の療養期間もさまざまですので、担当医とよく相談し、指示にしたがってください。