舟崎克彦(読み)フナザキヨシヒコ

デジタル大辞泉 「舟崎克彦」の意味・読み・例文・類語

ふなざき‐よしひこ【舟崎克彦】

[1945~2015]児童文学作家東京の生まれ。生物学者が空想世界で活躍する「ぽっぺん先生」シリーズで人気を得る。昭和49年(1974)「ぽっぺん先生と帰らずの沼」で赤い鳥文学賞受賞。他に「ピカソ君の探偵ノート」「雨の動物園」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「舟崎克彦」の意味・わかりやすい解説

舟崎克彦
ふなざきよしひこ
(1945―2015)

作家。東京生まれ。学習院大学経済学部卒業後、数年間の会社勤務中に創作した、妻の舟崎靖子(1944― 。のちに離婚)との共作『トンカチと花将軍』(1971)と、1973年(昭和48)発刊の『ぽっぺん先生の日曜日』で、日本の子供文学に本格的なナンセンス文学をもたらしたと評価された。彼は幻想を書くことは現実の否定であり風刺であり、また児童文学にはイメージや虚構性など、一般文学に不足しているものが豊かにあるという認識をもとに、『ぽっぺん先生と帰らずの沼』(1974。第4回赤い鳥文学賞)、『ぽっぺん先生と笑うカモメ号』(1951)、『ぽっぺん先生とどろの王子』(1976)など「ぽっぺん先生」シリーズ(路傍の石文学賞)を書き続け、各巻ごとにテーマをもちながら、共通して人間の種々相を簡明的確に表現している。また、『ゴニラバニラ』(1975)、『獏(ばく)のいる風景』(1985)、『鐘は鳴り私はのこる』(1986)、『暗くなり待ち』(1989)、『黄昏(たそがれ)クルーズ』(1993)などの一般文学があるが、これらは、人間の種々相の、より現実的、具体的な表現といえるだろう。

 子供をおもな読者とする長編の物語も、事故のため小学5年生の段階で身体の成長がとまり、その後外国にいたため帰国後23歳で小学6年生となり、同時に私立探偵をも開業した杉本ピカソを主人公にした『ピカソ君の探偵帳』(1983。のちに『ピカソ君の探偵ノート』と改題)、『マカロニグラタン殺人事件』(1995)、『大リーガー殺人計画』(2000)の新シリーズで、犯罪のなぞ解きを筋に、人間をめぐるさまざまな問題に触れた奥行きのあるエンターテインメントを提供している。ほかに、エッセイ集『ファンタジィの祝祭』(1981)、国際アンデルセン賞優良作品賞、産経児童出版文化賞受賞の『雨の動物園』(1974)、ボローニャ国際児童図書展グラフィック賞の『あのこがみえる』(1975)、産経児童出版文化賞の『Qはせかいいち』(1982)、絵本にっぽん賞の『はかまだれ』(1984)などがある。

 「ぽっぺん先生」と「ピカソ君」シリーズには自らイラストレーションを描き、舟崎靖子の『もりのゆうびんきょく』(1977)にもイラストレーションを添えて、以後「もりシリーズ」の特色の一つになった。絵本の仕事多く、子供の文学の全領域において、想像力の自由な展開の成果をみせていた。

[神宮輝夫]

『『ゴニラバニラ』(1975・角川書店)』『『あのこがみえる』(1975・偕成社)』『『ぽっぺん先生の日曜日』(1973・筑摩書房。「ぽっぺん先生」シリーズとして1994年までに9冊刊行)』『『ぽっぺん先生のどうぶつ日記』第1~6(1983~1984・筑摩書房)』『『ファンタジィの祝祭』(1981・文化出版局)』『『Qはせかいいち』(1982・偕成社)』『『はかまだれ』(1984・ひくまの出版)』『『獏のいる風景』(1985・筑摩書房)』『『愛の薔薇伝説――サン・ジョルディ物語』(1986・ほるぷ出版)』『『鐘は鳴り私はのこる』(1986・朝日新聞社)』『『黒猫ジルバ』(1988・ほるぷ出版)』『『仙人になる方法』(1988・小峰書店)』『『ヤマネコ殺人事件』(1989・金の星社)』『『旅猫ジルバ』(1989・ほるぷ出版)』『『夜猫ホテル』(1989・ウオカーズカンパニー)』『『暗くなり待ち』(1989・白水社)』『『ムササビ「モモ」の卒業式』(1990・偕成社)』『『夢猫ジルバ』(1990・ほるぷ出版)』『『きょうりゅうがやってきた ステゴザウルスはまいごです』『きょうりゅうがやってきた イグアノドンですまいどあり』『きょうりゅうがやってきた ポドケザウルスなんまいだ』『きょうりゅうがやってきた マメンチザウルスはわたしんち』『きょうりゅうがやってきた アパトザウルスにまかせなさい』(1991・くもん出版)』『『黄昏クルーズ』(1993・朝日新聞社)』『『王子マックの大冒険1 マックロイ城のおばけたち』『王子マックの大冒険2 カナリア王国の秘密』『王子マックの大冒険3 将軍カオスの逆襲』(1994・パロル舎)』『『ピカソ君の探偵ノート』『ピカソ君の探偵ノート2 マカロニグラタン殺人事件』『ピカソ君の探偵ノート3 大リーガー殺人計画』(1994・1995・2000・パロル舎)』『『それでも夜は明ける』(1995・秋書房)』『『語り下ろし 舟崎家の怪談』(1996・パロル舎)』『『野ウサギのラララ』(1997・理論社)』『『世界の神話絵本 アダムとイヴ』『世界の神話絵本 女神イシス』『世界の神話絵本 アマテラス』『世界の神話絵本 ケツアルコアトルの道』『世界の神話絵本 アルテミス物語』『世界の神話絵本 三体の神の物語』『世界の神話絵本 聖書物語』『世界の神話絵本 フィンの伝説』(1997・ほるぷ出版)』『『シエスタの庭』(1998・パロル舎)』『『浮揚譚』(1998・パロル舎)』『『岬まで――to the cape』(1999・パロル舎)』『『これでいいのか、子どもの本!!』(2001・風濤社)』『『大仙人』(2002・パロル舎)』『『トンカチと花将軍』(角川文庫)』『『雨の動物園』(ちくま文庫)』『『お電話倶楽部』(ちくま文庫)』『萬屋秀雄著『現代児童文学の展開――現代児童文学作家論2』(1986・大阪教育図書)』『神宮輝夫著『現代児童文学作家対談5 那須正幹・舟崎克彦・三田村信行』(1989・偕成社)』『日本児童文学協会編『作家が語るわたしの児童文学15人』(2002・にっけん教育出版社)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「舟崎克彦」の解説

舟崎克彦 ふなざき-よしひこ

1945- 昭和後期-平成時代の児童文学作家。
昭和20年2月2日生まれ。昭和46年妻の舟崎靖子(のち離婚)との共著「トンカチと花将軍」で注目される。49年博物学的知識と遊びの精神を一致させた空想物語「ぽっぺん先生と帰らずの沼」で赤い鳥文学賞。50年自伝的博物誌「雨の動物園」で産経児童出版文化賞。白百合女子大教授。東京出身。学習院大卒。

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