芥子園画伝(読み)かいしえんがでん(英語表記)Jiè zǐ yuán huà zhuàn

精選版 日本国語大辞典 「芥子園画伝」の意味・読み・例文・類語

かいしえんがでん カイシヱングヮデン【芥子園画伝】

中国画譜。三集一七巻。一集は王概、二、三集は王概、王蓍王臬編。一六七九~一七〇一年成立。明の画家李流芳が集めた歴代名家山水画譜を増補したもの。初学者のために山水画法を詳しく論じる。日本では寛延元年(一七四八)以後再版を重ね、南画発展影響を与えた。

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デジタル大辞泉 「芥子園画伝」の意味・読み・例文・類語

かいしえんがでん〔カイシヱングワデン〕【芥子園画伝】

中国、清初に刊行された画譜芥子園南京の名士沈心友の別荘名または書店の名という。3集。初集は沈氏所蔵の明の李流芳の山水画譜を王槩おうがいが増補したもので、李漁の序がある。1679年刊。2・3集は王槩・王蓍おうし王臬おうげつ兄弟が編した花鳥の画譜で1701年刊。日本には元禄(1688~1704)ごろに伝えられ、南画の発展に影響を与えた。

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改訂新版 世界大百科事典 「芥子園画伝」の意味・わかりやすい解説

芥子園画伝 (かいしえんがでん)
Jiè zǐ yuán huà zhuàn

中国,清代の画譜。《芥子園画譜》と通称される。4集より成る。王概(安節)・王蓍(おうし)(密草)・王皋(おうこう)(司直)兄弟の編纂。芥子園は書物出版のパトロン李漁(笠翁)の南京にあった別荘名。李漁の女婿沈心友が明の画家李流芳(長蘅)の山水画集をもとに王概に増補を依頼し,1679年(康熙18)第1集が完成。最初に《青在堂書画浅説》として,簡単な歴代山水画論の抜粋,画材説明をのせ,ついで樹,山石,人物屋宇にわかち数多くの挿図により描写法を説明,終りに宋以後の有名画家の画譜を加える。好評を博したため,1701年王概は兄弟2人を加え,蘭竹梅菊(2集)と花卉翎毛(3集)の両譜も刊行。これに便乗して,商人が,丹陽の肖像画家丁鶴洲の《写真秘訣》などの図譜をよせ集めて,人物画譜を作り,《芥子園画伝》4集として売り出した。数多くの版本があり,4集本も多い。日本にも早くから入り,1748年(寛延1)以来模刻され,池大雅,与謝蕪村らの南画家や浮世絵版画技術に少なからぬ影響を与えた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「芥子園画伝」の意味・わかりやすい解説

芥子園画伝
かいしえんがでん

中国、清(しん)代の画譜。初集と二集がある。初め芥子園から刊行されたのでこの名がある。芥子園とは、清の文筆家李漁(りぎょ)が晩年に住んだ南京(ナンキン)の別荘名でもあり、初集には李漁の康煕(こうき)18年(1679)の序文が載る。初集は名家の山水画法を集め、分類したもので、当時の二流画家王槩(おうがい)が編集述作。各時代の画論の要旨を集録したあと、樹石など、山水の描法を分類して多くの図を載せている。二集は四君子(蘭(らん)竹梅菊)その他の花卉(かき)、草虫、翎毛(れいもう)(小鳥)の画譜で、王槩とその兄弟王蓍(おうし)、王臬(おうげつ)が1701年(康煕40)に編集したとするもので、通行本はこれを「二集」と「三集」に分けている。初集以下、南京で開版され、古画閲覧に恵まれぬ画家志望者の自習のための手引書として好評を得て、1782年(乾隆47)の再刻以来たびたび改版が行われてきた。1818年(嘉慶23)に四集が蘇州(そしゅう)で刊行されているが、これはこの画譜の売れ行きに便乗した偽托(ぎたく)本である。初集発刊後まもなく日本にも伝来し、翻刻本がつくられ、南画の発展普及に寄与した。

[星山晋也]

『草薙奈津子訳『現代語訳 芥子園画伝』全2冊(1984・芸艸堂)』

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百科事典マイペディア 「芥子園画伝」の意味・わかりやすい解説

芥子園画伝【かいしえんがでん】

中国,明末の画家李流芳が古来の名画を集めた《山水画譜》を,王概が増補編集して1679年刊行したもの。芥子園はこの山水画譜を所蔵していた沈心友の岳父李漁の別荘。初集として樹譜,石譜,山水譜等を集録し,技法を説明。さらに王概・王蓍・王【こう】の兄弟が二集に四君子,三集に花卉(かき)・草虫等を集録して1701年に発刊。人物図を集めた四集は偽書といわれている。日本には初集発刊後間もなく渡来し,南画の発展や浮世絵版画の技術画に大きな影響を与えた。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「芥子園画伝」の意味・わかりやすい解説

芥子園画伝
かいしえんがでん
Jie-zi-yuan-hua-zhuan

中国,清の画譜。4集。李漁の序によれば,第1集は明の李流芳の「山水画譜」を王がいが増補,編集したもので康煕 18 (1679) 年刊。王がい,王蓍 (おうし) ,王げつ王氏3兄弟共編の第2集「蘭竹梅菊譜」と第3集「花卉 翎毛譜」は,ともに同 40年刊。第4集は盛行した『芥子園画伝』の名をかりた偽託本で人物画譜。第1集の巻初に「青在堂書画浅説」と呼ぶ古来の絵画論を要約した画論および技法論を,また2・3集にも画論,技法論を載せ,各集ともそのあとに歴代名画家の作品の模写を掲載する。日本には江戸時代初期,黄檗僧 (おうばくそう) により将来され,翻刻本が作られて南画の流行とともに高く評価された。またその版画の技術は『十竹斎書画譜』とあわせて浮世絵発達に大きな影響を与えた。

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