花(能)(読み)はな

世界大百科事典(旧版)内の花(能)の言及

【演劇】より

…このような,社会の他の部分から切り離され閉ざされることによって,高度に象徴機能を集約した特権的でもあり統合的でもある空間は,16世紀末から17世紀にかけてフランスを中心に流行する公開の宮廷バレエの演戯空間にも現れ,同時代の共同幻想を,異教神話の象徴的表現を介して絶対王権の成立へとつなぐ役割をしている。日本でいえば室町期の能舞台は客席張出し型であり,それを囲むように桟敷が組まれたが,その記憶は江戸幕府の式楽となって以来の現行の能舞台にも残っているし,また歌舞伎も,〈悪所〉として常設劇場に囲い込まれた後でも,江戸時代には,単に花道だけではなく本舞台が客席に張り出していた。そこには舞台への吸収力と,舞台・客席の相互浸透という二つのベクトルがあるように思うが,ともあれヨーロッパで16世紀末に出現する一連の常設劇場の中では,エリザベス朝ロンドンのグローブ座(シェークスピアの常打ち小屋)などが,客席張出し型(張出舞台)によって中世末期の祝典劇の参加の構造を保っている。…

【世阿弥】より

…美童としての魅力はすでに失せ,田楽新座の喜阿弥や近江猿楽比叡座の犬王(いぬおう)らの競争相手も父の在世期から台頭しており,新大夫の前途は多難だったろうが,世阿弥は精進を重ねて苦境をのりこえたようで(当時の記録は皆無に近い),99年(応永6)には京都一条竹ヶ鼻で3日間の勧進猿楽(勧進能)を催し,将軍の台臨を得て,天下の名声を獲得した。翌年に《風姿花伝》の第三までを書いたのは,彼の自信の表明でもあったろう。芸名の世阿弥陀仏を称したのはその直後の40歳ころかららしく,セアではなくゼアと濁ったのは義満の裁定に基づく。…

【風姿花伝】より

…能楽の大成者世阿弥が父観阿弥の遺訓に基づいて著した最初の能楽論書。略称を《花伝》ともいう。一般には《花伝書》の名で知られているが,著者自身,書名の由来を〈その風を得て,心より心に伝ふる花なれば,風姿花伝と名付く〉と言明している。…

※「花(能)」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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